ランナー膝を改善したい! 症状や予防・治療法などについて徹底解析

十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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運動不足の解消や健康な体を維持するために、ランニングを日々の生活に取り入れている方が増えています。しかし、ランニング人口の増加に伴い、ランナー膝と呼ばれているスポーツ障害に悩んでいる方も増加しているのです。「ランニングをするたびに膝が痛む」「膝を動かすと音が鳴る」などの症状に悩んでいる方は、ランナー膝になっている可能性があります。ランナー膝は慢性化すると言われているため、早めに改善しなければなりません。そこで、本記事では、ランナー膝の基礎知識・原因・症状・予防や治療方法について説明します。

この記事を読むことで、ランナー膝の知識を身につけ、改善するための方法が分かります。膝に痛みを感じている方や治療法が知りたい方は、ぜひチェックしてください。

01. ランナー膝の基礎知識

ランナー膝とは、一体どのような状態なのでしょうか。メカニズムやなりやすい人・患者数について詳しく説明します。

1-1.どんなものか

ランナーに多く発生するランナー膝は、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)のことです。腸脛靭帯は、太ももの外側にある筋肉で、股関節と膝の関節にまたがる靭帯を指しています。別名・ランナーズニーとも呼ばれており、陸上選手によく起きる慢性的なスポーツ障害です。ランニング中や膝を曲げるときに痛みが走り、なかなか思うように走れなくなってしまいます。痛みの出方は人によってさまざまですが、一般的に膝の外側に痛みが出て、放置すれば慢性化してしまうので早めの改善が大切です。

1-2.メカニズム

ランニングをしたり、歩いたりするときは、膝を伸ばしたり曲げたりする屈伸運動をします。屈伸運動は、膝関節の外側2~3cm上の部分にある大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)が前後に移動する仕組みです。その際に、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が摩擦を起こして炎症が発生します。その結果、膝の外側に痛みを感じることになるのです。

1-3.なりやすい人とは

腸脛靭帯のスライドの動きが悪くなるほどに摩擦が生じ、ランナー膝になりやすいと言われています。腸脛靭帯は、前を大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)、後ろを大殿筋(だいでんきん)という筋肉とつながっている太ももの外側にある筋肉です。つまり、これら2つの筋肉が硬い人ほど、腸脛靭帯のスライドの動きが悪くなります。運動不足の人やガニ股・フォームが不安定な人などは要注意です。

02. ランナー膝の原因

ランナー膝の原因は、人によってさまざまです。それぞれの原因について詳しく説明します。

2-1.フォームが悪い

走っているフォームで外側に重心がかかっている人は、ランナー膝になりやすいと言われています。自分が正しいと思っていても、誤ったフォームで膝を痛めている可能性があるのです。フォームを見直すときは、靴のかかとの外側に注目してください。外側が極端に減っている人は、フォームが悪い証拠です。理想的なランニングフォームは、背筋を伸ばす・肩の力を抜く・顎(あご)を引く・肘を曲げてしっかり引く・自分に合った歩幅と足の回転がポイントとなります。背筋が曲がった姿勢でのランニングは、膝に余計な負荷がかかってしまうので注意してくださいね。

2-2.しっかり準備運動をしていない

不十分な準備運動によるランニングは、ランナー膝の要因です。準備運動は筋肉の働きを活性化させるための運動で、筋温の上昇によってランニング効果も高まります。事前に、筋肉を動かしておくことで、膝にかかる負担も少なくなるのです。ランニングをする前に、屈伸や足首をまわすなどの準備運動をしておきましょう。

2-3.ランニングシューズが合っていない

「スニーカーならいいだろう」と、ランニング専用ではないシューズを使用してはいけません。なぜなら、走っているときの衝撃が吸収できないからです。シューズが硬く薄すぎると、地面から受ける衝撃がそのまま膝にかかってしまいます。ランニングをする際は、専用のランニングシューズに履き替えることが大切です。

2-4.筋力不足・筋肉疲労

運動不足の人が急に過剰なランニングをすると、膝や筋肉に大きな負荷がかかります。自身の筋力に合ったランニングをしなければなりません。筋力があまりついていない方は、無理のない程度からランニングを始めていきましょう。また、走りすぎによるオーバーユースも原因の1つです。腸脛靭帯と大腿骨との摩擦が大きくなるほど、炎症が強くなります。筋肉にも疲労が蓄積するので、ランニングの量を調整しなければなりません。

2-5.O脚(ガニ股)

O脚は、足の内くるぶしをつけた状態で立ち、膝の間にすき間がある足を指しています。膝が外側を向くO脚は、腸脛靭帯と大腿骨がこすれやすく、摩擦が生じ炎症が起こりやすくなるのです。該当する方は、ランニング前にO脚を改善しなければなりません。

03. ランナー膝の症状

ランナー膝を早めに改善するためには、症状を把握しておかなければなりません。痛む箇所や痛みの種類・併発症状・放置の危険性について説明します。

3-1.痛む箇所

痛みは、腸脛靭帯が位置する膝の外側に起こります。具体的な位置としては、膝の外側2~3cm位の場所でしょう。常に痛みが出ているわけではなく、ランニング中や階段の昇降時・下り坂の走行・膝を動かすときなどに、痛みが発生するケースがほとんどです。また、一度痛みが出ても、休むとある程度痛みが引くこともあります。

3-2.痛みの種類

痛みの種類によって、ランナー膝の状態が分かります。ランナー膝の初期症状では、痛みがあまり強くありません。準備体操やストレッチをせずに走り出すと痛みは出ますが、走り続けていると軽減・消失していきます。
第二段階に入ると、走っている途中で痛みが現れるでしょう。運動強度を上げたり、走行距離をのばしたりするときに痛みやすくなります。ほとんどの場合は、ランニングをやめると痛みがなくなり、日常生活を難なく送ることができるのです。
そして、第三段階に入ると、歩いているときや階段の上り下りなど、日常生活で常に痛みを感じるようになります。人によっては、床に足がつくだけで痛みを感じることもあり、歩行や膝の曲げ伸ばしが難しくなるのです。

3-3.併発症状について

最近では、ランナー膝と同時に「筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)」を併発するケースが増えています。これは、体の筋肉に激しい疼痛を生じる病気です。腸脛靭帯に痛みを引き起こすきっかけとなり、大腿筋膜張筋や大殿筋などの筋肉・筋膜の疲労や過負荷が原因となっています。

3-4.放置するとどうなるか

ランナー膝を放置すると、歩けなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことになります。床に足をつけるだけでも痛みを走ることが多くなるため、寝たきり状態になることもあるのです。慢性化につながる状態なので、絶対に放置してはいけません。「様子を見る」「放置すれば治る」というわけではありませんので注意してくださいね。

04. ランナー膝の対策・予防方法

それでは、ランナー膝の対策・予防方法はどのようにすれば良いのでしょうか。

4-1.医者へ行くべき症状

ランニング中、膝の外側に痛みがある・膝を曲げ伸ばしすると一定のところで痛みが出る・一定の距離を走ったときに痛みが出る方は、病院に行ったほうが良いでしょう。また、痛みが出ても休むとある程度治まるが、走り始めると再び痛くなるケースも要注意です。何かしらの異常が出てきた場合は、すぐ病院で検査してください。

4-1-1.検査方法

基本的に、触診や問診で症状を確認します。ランナー膝を確かめるために、よく行われるのが「徒手検査法(としゅけんさほう)」です。膝を90℃曲げた状態で大腿骨外顆膝を指で押しながら膝を伸ばします。その際に痛みが発生する場合は、腸脛靭帯炎の可能性が大きくなるのです。

4-1-2.治療方法

ランナー膝は、基本的に安静を保つことが大切です。症状が軽度であれば、しばらく体を安静にすることで痛みが解消します。痛みがひどい場合は、炎症抑制効果があるアイシングや湿布・軟膏タイプの消炎鎮痛薬を塗ったり、内服薬を服用したりするでしょう。また、医療機関では、専用機器を使用した温熱療法や電気・超音波・レーザー療法があります。

4-2.痛みを和らげる方法

痛みが出てきたときは、これから説明する方法を試してみてください。自宅でも簡単にできる方法なので、知っておくと役立ちますよ。

4-2-1.固定する

サポーターやテーピングを利用して固定する方法があります。膝の固定は、膝関節や筋肉のサポート効果があり、どうしても動かなければならないときに装着すると便利です。ただし、固定だけでは根本的な改善にならないので注意してくださいね。

4-2-2.安静にする

膝を動かすたびに痛みが出る場合は、安静にしてください。膝に負担がかからないように、体を横にしましょう。痛みが治まったからと、ランニングをしてはいけません。大腿筋膜張筋など股関節外足部を中心にストレッチの強化を行うため、医師の指示に従いながら運動を始めることが大切です。

4-2-3.アイシング

痛みを和らげる方法で最も効果的なのがアイシングです。ランニング後に痛みが出てきた場合は、患部をアイシングしてください。スポーツ店に売っているアイシング専用の袋を使用するのも良いですが、保冷剤をタオルに包んで冷やすこともできます。冷やすことで炎症を抑えることができるでしょう。

4-2-4.市販薬

どうしても痛みに耐えられないときは、市販薬の痛み止めを使用するのも方法の1つです。ただし、中には刺激の強い成分が含まれているものもあるため、過剰に使用するのはやめてください。あくまで、一時的な対処法として用いることが大切です。

4-3.予防方法

ランナー膝にならないためには、日々の予防法が大きなポイントとなります。予防法として効果的なストレッチ・インソール・フォーム改善についてチェックしておきましょう。

4-3-1.ストレッチ

ランナー膝は、筋肉が硬い人や運動不足気味な人に起こりやすいと言われています。筋肉が硬くなっている人は、その筋肉を柔軟にすることが大切です。そこで、大殿筋と大腿筋膜張筋のストレッチをおすすめします。この2つの筋肉の柔軟性を得ることができれば、腸脛靭帯と大腿骨の摩擦を防ぐことができるでしょう。

<大殿筋のストレッチ>

  1. イスに座って、背筋をまっすぐに伸ばす
  2. 伸ばすほうの足をもう片方の足の上に乗せて、両手を背中の後ろで組む
  3. 乗せた足の太もも付近やおしりが伸びていることを感じつつ30秒以上、上半身を前へ倒す
  4. もう片方の足も同じようにストレッチする

<大腿筋膜張筋のストレッチ>

  1. 仰向けに寝て、伸ばしたいほうの足を反対側に乗せて交差する
  2. 交差している足を反対側の手で引っ張る
  3. 骨盤の横の部分が伸びているのを感じながら30秒以上伸ばす
  4. 逆の足も同じようにストレッチする

4-3-2.インソール

インソールとは、靴の中に敷く「中敷き」のことです。インソールを使用することで、足のバランスを変えたり、地面から受ける衝撃を和らげたりする効果があります。ただし、インソールだけでは体のゆがみやねじれを戻すことはできませんので注意してくださいね。

4-3-3.フォーム改善

ランニング中の姿勢やフォームを変えることで、膝にかかる負担を減らすことができます。小指のつけ根にタコや魚の目ができている場合は、フォームが悪い証拠です。その場合は、親指で踏ん張る癖をつけてください。外側に重心を置くのではなく、親指を意識することで安定した運動姿勢を保つことができます。それでも不安な方は、スポーツジムなどの専門スタッフに尋ねると良いでしょう。

4-4.やってはいけないこと

「ゆっくり走れば大丈夫」と思いがちですが、逆にランナー膝を悪化させてしまいます。ゆっくり走ることで着地の時間が長くなり、太ももの外側に負担がかかるのです。膝に痛みが出てきた場合は、安静にすることが大切なポイントとなります。また、悪い姿勢も膝に負担がかかるNG行為です。日常生活でも、背筋がまっすぐに伸びた正しい姿勢を心がけてください。

05. ランナー膝に関してよくある質問

ランナー膝に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

5-1.ランナー膝になりやすいランニングフォームとは?

初心者に多いベタベタ走りと地面の蹴りすぎは、ランナー膝になりやすいランニングフォームです。ベタベタ走りは、地面と足との接地時間が長い走り方となります。楽に感じる走り方ですが、1番足に負担をかけているのです。当てはまる方は、ランニングフォームを見直す必要があります。

5-2.ランナー膝はどのくらいで治るのか?

安静にして、医師に従いながら治療を行えば、約2~3週間で回復する可能性があります。ただし、症状が悪化している場合は、1か月以上かかることもあるのです。症状や治療方針によって異なるため、長い目で治療を行いましょう。

5-3.ランニング前と後にするべきこととは?

ランナー膝を予防するためには、ランニング前の準備運動とランニング後のクールダウンを徹底してください。準備運動は筋肉を温め、関節の可動域を広げることができます。クールダウンは、ランニング後にたまった疲労の除去が可能です。また、普段から筋力トレーニングとストレッチを習慣的に行いましょう。

5-4.ランナー膝を改善するためのコツが知りたい

膝の痛みを誘発しているトリガーポイントをきちんと把握することです。トリガーポイントとは、発痛点とも言い、痛みが最も強い部位を指しています。トリガーポイントを把握して取りのぞくことができれば、ランナー膝も順調に改善できるでしょう。

5-5.ランナー膝か確かめるチェック法とは?

自分でランナー膝か確かめたいときは、グラスピングテストをしてみてください。方法は簡単で、スクワット中に痛みが出るかを確認します。立った状態で膝をゆっくり直角にしたとき、膝の外側あたりが傷む場合は、腸脛靭帯に炎症が起きている可能性があるのです。

06. まとめ

いかがでしたか? ランナー膝は、ランニングを行っている人に発症しやすいスポーツ障害の1つです。膝の外側2~3cmの部位に痛みを感じることが多く、ランニングをするたびに痛みがひどくなります。放置すると、歩けなくなったり、膝が曲げられなくなったりと日常生活に支障をきたす恐れがあるので注意しなければなりません。ランナー膝を改善するためにも、基礎知識を身につけて医療機関で治療を受けましょう。