歯茎からの出血は歯周病のサイン?歯槽膿漏になる前にセルフケアを!

「歯茎からの出血が気になる…」というその悩み、よく分かります。歯みがきのたびに歯茎から出血があると、まず疑うのが歯槽膿漏(のうろう)でしょう。しかし、出血の原因はそのほかにもいろいろ考えられます。思わぬことが原因になっていることもあるため、歯医者へ行くべきかよく検討してみてください。この記事では、歯茎から出血する原因や対処法・治療法などをまとめて解説しています。

  1. 歯茎から出血する原因
  2. 歯茎の出血と歯周病との関係
  3. 歯茎の出血を改善する方法
  4. 歯茎からの出血を治療する方法について
  5. 歯茎から出血があった場合の歯科医院選び
  6. 歯茎からの出血にかんするよくある質問

この記事を読むことで、歯茎の出血がなぜ起こっているのか分かるはずです。適切な対処法を知るためにも、ぜひ参考にしてみてください。

1.歯茎から出血する原因

歯茎から出血する原因としては、さまざまなものが考えられます。主な症状や原因をまとめてみました。

1-1.出血に伴う主な症状

歯茎から出血する原因としては、そのほとんどが歯周病によるものです。その場合は、出血が止まらないだけでなく、痛みを伴う・臭う・腫れるなどの症状を伴うことが多いでしょう。ただし、ほかの原因でもこのような症状が現れることもあるため、注意深く観察する必要があります。

1-2.出血の原因として考えられるもの

では、歯茎から出血する原因として考えられるものには何があるのでしょうか。

1-2-1.90%以上が歯周病によるもの

歯茎からの出血は、その90%以上が歯周病によるものだということが分かっています。歯周病とは歯を支えている骨が溶けてしまう病気のことです。重症化すると歯が抜けてしまうこともあります。この状態を「歯槽膿漏(のうろう)」と言い、歯を支えている歯槽骨から膿(うみ)が出る症状が特徴的です。そのほかにも「歯茎が下がってきて歯がしみる」「歯茎が腫れて痛みが出る」などの症状があります。現在は歯槽膿漏(のうろう)の状態も含めて「歯周病」と呼ぶ専門家が増えてきました。歯茎からの出血は歯周病の初期症状であり、適切な対処をすることで症状の悪化を防ぐことができるでしょう。

1-2-2.ホルモンバランスの変化も影響

歯茎からの出血の原因は歯周病以外にもあります。次に多いのが「ホルモンバランスの変化」です。特に女性は更年期や妊娠などによってホルモンバランスが変化しやすいでしょう。ホルモンバランスが変化すると歯茎に流れる血液の量が増え、歯みがき中などに出血しやすくなります。この時期は歯周病になりやすいと言われているため、歯のケアはしっかりと行っておきましょう。

1-2-3.間違った歯みがきは禁物

歯茎は強い刺激に弱いため、力を入れすぎて歯みがきをすると出血しやすくなります。歯をみがくときの圧力は100~200g程度が最適です。強くみがきすぎていないか自分でチェックしてみましょう。歯ブラシの毛先がすぐ開いてしまうようなら、強くみがきすぎている証拠です。

1-2-4.タバコも出血の原因に

喫煙者は非喫煙者に比べて、歯茎から出血しやすいことが分かっています。その原因は、タバコには毛細血管を収縮する作用があるためです。血流が悪くなり、歯茎が腫れやすい状態になります。その結果、少しの刺激で出血しやすくなるのです。

1-2-5.病気が原因である場合も?

何らかの病気が原因で歯茎から出血する場合も考えられるでしょう。非常にまれなケースではありますが、白血病や血友病・血小板減少性紫斑病などの症状の一つとして歯茎からの出血があります。その場合はほかの症状も併発することが多いため、自分の体をよく観察しておくようにしましょう。

1-3.子どもの歯茎から出血!その原因は?

子どもの歯茎から出血しているときは、ほかの症状がないか確認してみましょう。発熱や歯茎の腫れがある場合は、ヘルペス性口内炎など小児特有の疾患が原因になっている可能性があります。そのほかには、歯肉炎を起こしている場合もあるでしょう。歯みがきが行き届かず歯垢(しこう)がたまることが原因です。子どもの歯肉炎は放置すると歯周病に発展しやすいため、早めに対処する必要があるでしょう。

2.歯茎の出血と歯周病との関係

歯茎からの出血はその90%が歯周病によるものだということはご説明しました。では、歯周病とは一体どのような病気なのでしょうか。メカニズムや原因、なりやすい人の特徴などをまとめてみました。

2-1.歯周病の定義とメカニズム

歯周病とは、歯茎の周辺が炎症を起こす病気です。炎症の原因は細菌感染であり、歯と歯茎の境目の清掃が不十分だと、細菌が停滞しやすくなります。細菌によって歯肉が炎症を起こすと、いずれ歯を支えている骨を溶かしてしまい、最後は歯を失うことになる場合もあるでしょう。歯茎の内側にある毛細血管は、歯茎の溝へと栄養を送っています。この部分が炎症を起こすことで、栄養の供給が不足してしまうのです。その結果、少しの刺激でも歯茎から出血してしまうことになります。

2-2.歯周病の原因

口の中には数百種類以上の細菌が生息しています。しかし、その存在自体は危険なものではないのです。問題は、細菌が増えすぎることによって「細菌の塊」ができてしまうこと。この塊を「プラーク」と呼び、プラークが歯の周りに付着することで歯茎は炎症を起こします。プラークが付着しているということは、歯みがきが不十分であるということです。つまり、毎日の歯みがきが正しくない、または不十分である場合、歯周病を起こしやすくなります。そのほか歯周病の原因となるのは、タバコや歯ぎしり・詰め物の不適合などです。特にタバコは体の抵抗力を下げて歯周病を治りにくくするため、喫煙者は特に注意する必要があるでしょう。

2-3.歯周病はどのくらい危険な病気なのか?

歯周病は放置しておくと危険な病気です。初期・中期・後期に分けて進行度を詳しく解説しましょう。

2-3-1.初期はブラッシングで改善が可能

歯周病の初期段階を「歯肉炎」と呼び、歯茎が赤くなって出血が起こるのが特徴的な症状です。歯肉炎と診断されたら、歯科医院で歯垢(しこう)や歯石を取り除いてもらってください。その後は、丁寧な歯みがきを心がけることで簡単に治る場合が多いでしょう。ただし、定期的な診察を受けて経過を見てもらうことをおすすめします。

2-3-2.中期に入ると歯槽骨が溶け始める

歯肉炎が進行すると、歯と歯との間がはがれて柔らかい感じになってきます。歯が少しぐらつくこともあるでしょう。この症状は、中期の歯周病に進行している証拠です。歯槽骨も溶け始めているため、抗生剤を使って細菌を退治する必要があります。

2-3-3.最終的には歯が抜け落ちることも

歯周病がさらに進行した状態を「歯槽膿漏(のうろう)」と言います。歯槽膿漏(のうろう)が末期状態になると、最終的には歯が抜け落ちることになるでしょう。そうなる前に、以下のような症状が出た段階で必ず歯科医院を受診し、積極的な治療を受けてください。

  • 歯茎から膿(うみ)が出てきた。
  • 歯の根っこが見えてきた。
  • 口臭がひどくなった。

2-4.歯周病になりやすい人と患者数

歯周病になりやすい人の特徴と現在の患者数をまとめてみました。

2-4-1.歯周病になりやすいのはこんな人!

歯周病にはなりやすい人とそうでない人がいます。歯周病の原因はプラークであるため、プラークがたまりやすい人は歯周病になりやすいと言えるでしょう。以下のような人は「唾液の量が少ない」「唾液のpHが高い」などの理由で口内環境が悪くなりがちなため、特に注意してください。

  • タバコを吸う人。
  • ストレスをためやすい人。
  • 生活習慣が乱れがちな人。
  • 肥満の人。

そのほかにも、加齢に伴って免疫力が落ち歯周病にかかりやすくなります。日ごろから免疫力を落とさないような生活を心がけることも大切でしょう。

2-4-2.歯周病の患者数

現在、日本における歯周病患者の数は300万人以上で、成人の10人に8人が歯周病にかかっていると言われています。そのうち、30歳代以上の患者数が全体の約8割を占めており、年齢とともに増加傾向にあることが分かるでしょう。さらに、男女別に見ると、男性に比べて女性の方が罹患(りかん)率が高いことが分かっています。その理由は、女性の方が唾液の量が少ないことのほか、女性ホルモンの関係で口内環境が悪化しやすいことが考えられるでしょう。

2-5.歯周病をセルフチェックしてみよう!

「自分が歯周病かどうか分からない」という人のために、セルフチェックの方法をご紹介します。以下の項目でいくつ当てはまるものがあるかチェックしてみてください。

  • 歯みがきのたびに歯茎から出血する。
  • 口臭が気になる。
  • 歯の間によく食べものがはさまる。
  • 歯並びが悪くなった。
  • 朝起きたとき口の中がネバネバする。
  • 歯が抜けたままの部分がある。
  • 歯がぐらぐらする。

半分以上当てはまる項目がある人は、歯周病が進行している可能性があります。すぐに歯科医院を受診するようにしましょう。

3.歯茎の出血を改善する方法

歯茎から出血した場合、歯科医院に行くほかに自分でできる改善法をまとめてみました。

3-1.血は止めない

歯茎から出血すると歯みがきをするのが怖くなる人も多いと思います。しかし、歯みがきをして定期的に歯茎を刺激することで、歯茎の血行が促進されるのです。その結果、歯茎が強くなり、健康的な歯茎に生まれ変わります。

3-2.歯みがき粉の使い方を見直す

歯みがき粉の使い方も重要なポイントです。まず、1回の歯みがきで使用する歯みがき粉の量は1.5cm程度にすること。泡立ちを控えめにするために、歯ブラシは水でぬらさずに乾いた状態のまま歯みがき粉を付けるようにしましょう。さらに、歯みがき粉に含まれたフッ素を洗い流さないように、口をゆすぐときは1~2回にしてください。

3-3.正しい歯みがきの仕方を身に着ける

正しい歯みがきによって、歯茎からの出血を改善することは十分に可能です。ポイントは、歯と歯茎の間の歯垢(しこう)を意識してみがくこと。歯ブラシの毛先を45度に傾け、歯周ポケットの中までブラシが入るようにみがいてください。ブラッシング圧は軽く、歯を一つずつみがくつもりで小刻みに動かしましょう。特に就寝中は歯周病が進行しやすいため、寝る前にはしっかりと歯をみがく習慣を付けてください。

3-4.歯ブラシの選び方とデンタルフロス

歯ブラシは「大きすぎないもの」「柔らかめのもの」「毛先が広がっていないもの」を使うようにしましょう。歯ブラシだけで落としきれないプラークには、デンタルフロスが効果的です。歯と歯の間に糸をとおすことでプラークを取り除きます。最初のうちは使うたびに出血が起こることもありますが、使っていくうちに出血しなくなってくるはずです。

3-5.生活習慣にも注意が必要!

以下のような生活習慣は、プラークをためる原因になります。

  • 睡眠不足が続いている。
  • 疲労やストレスがたまっている。
  • よくかまずに食べる。
  • 間食が多い。

歯周病の進行を止め、予防するためにも、このような生活習慣は改善するように心がけましょう。

4.歯茎からの出血を治療する方法について

歯茎から出血がある場合、歯科医院ではどのような治療を行うのでしょうか。費用や薬にかんする情報もまとめてみました。

4-1.病院へ行くべき症状とは?

以下のような症状がある場合は歯科医院で適切な治療を受けるべきです。

  • 歯をみがくたびに出血がある。
  • 歯をみがいて寝たのに、朝起きると口の中がネバネバする。
  • 歯茎が腫れて痛みがある。
  • 明らかに口臭がひどくなった。

4-2.歯科医院での検査・診断方法

歯科医院では、まず現在の状態を確認するための問診を行います。次に、プラーク付着の状態や歯周ポケットの深さ・歯の動揺度を調べ、エックス線写真によって歯槽骨の状態を確認することになるでしょう。その結果、歯茎からの出血が歯周病によるものであると診断します。

4-3.治療方法

歯周病と診断された場合、歯科医院ではプラークの除去が基本治療方法となります。スケーラーという特殊な器具を使ってプラークや歯石を取り除く方法が一般的でしょう。この治療法が「スケーリング」です。スケーリングで取り除くことができない歯石については「ルートプレーニング」という方法で治療します。歯の根っこを平らにすることで、細菌感染を予防する方法です。歯周病が悪化してしまった場合は「フラップ手術」によって歯茎を切開し、プラークや歯石を取り除きます。

4-4.費用について

歯周病の治療にかかる費用については保険が適用されます。プラークの除去とクリーニング1回につき、自己負担額1,800~2,000円程度が一般的でしょう。治療期間は症状の進行度によって異なるため、トータルでかかる費用は治療期間が長くなるほど高くなります。症状が進行してプラーク除去が難しい場合は、フラップ手術が行われますが、この場合の費用は1部位あたり3,000円ほどです。

4-5.投薬について

最近は、投薬による歯周病治療を行う歯科医院も増えてきています。菌の種類に応じて薬を処方し、菌の量をコントロールしてからプラーク除去を行うという方法です。投薬を続けて1週間ほどで、出血や腫れが改善されると言われています。投薬による治療法は、感染の原因となる菌を根本的に退治するため、再発しにくいという点がメリットです。

4-6.治療における注意点

歯科医院で治療を受けると同時に、自宅でのヘルスケアもしっかりと行いましょう。まず、喫煙は歯周病の悪化につながります。治療効果が落ちてしまう可能性もあるため、禁煙に努めるようにしましょう。また、治療の成果を上げるためには、毎日の歯みがきが重要なポイントになります。「治療しているから」と油断せず、普段の歯みがきを怠らないようにしてください。歯周病は再発しやすい病気です。治療後も気を抜かず、セルフケアを心がけましょう。

5.歯茎から出血があった場合の歯科医院選び

歯茎から出血があった場合、どのような歯科医院を選べばよいのでしょうか。選び方のポイントと注意点をまとめてみました。

5-1.歯科医院選びのポイント

全国にはたくさんの歯科医院があります。その中で「よい歯医者さん」を見つけるのは難しいでしょう。「近所だから」「先生が優しいから」という理由だけでなく、自分に合った歯科医院を選ぶ必要がありますよね。歯科医院選びで重視したいポイントは以下のとおりです。

  • 受付の対応が丁寧でスムーズ。
  • 事前の説明が十分である。
  • 院内の衛生面が管理されている。
  • 治療後のセルフケアについて指導してくれる。

5-2.歯科医院選びの注意点

歯科医院を選ぶ際の注意点としては、患者と適切なコミュニケーションをとれるかどうかをチェックする必要があります。自分の症状に対してどのような治療が適しているのか、分かりやすく説明してくれる歯科医師に担当してもらうべきです。そういった医師がいるかどうかは、患者さんの口コミなどを参考にすれば分かります。インターネットで確認できる場合もあるため、ぜひチェックしておいてください。

6.歯茎からの出血にかんするよくある質問

歯茎からの出血に悩んでいる人が感じるであろう疑問とその回答をまとめてみました。

Q.歯みがきによって歯茎から出血する日としない日があります。なぜですか?

A.歯茎から出血するということは、歯茎が炎症を起こしているということです。出血の程度は炎症の状態によって変わるため、健康状態によって血が出るときと出ないときがあります。

Q.服用している薬が原因で歯茎から出血することはありますか?

A.降圧剤などの薬は歯茎を厚くするため、出血を引き起こしやすくなります。薬を変えることができない場合は、定期的に歯科医院でクリーニングしてもらいましょう。

Q.歯周病と歯槽膿漏(のうろう)はどう違うのですか?

A.以前は歯周病の重度の状態を「歯槽膿漏(のうろう)」と呼んでいました。現在は歯槽膿漏(のうろう)の状態もまとめて「歯周病」と呼ぶ専門家が増えています。

Q.歯周病を予防するためには、どのくらいのペースで検診を受けるべきですか?

A.歯周病患者が急増する40代を過ぎたころからは、3~4か月に1回のペースで定期検診を受けることをおすすめします。

Q.歯ぎしりが原因で歯周病になってしまったようです。対処法にはどのようなものがありますか?

A.歯型をとり、一人一人に合ったマウスピースを作成する方法があります。就寝時に装着することで、歯への負担を減らすことが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。歯茎から出血する原因や対処法などをまとめて解説しました。歯茎からの出血が頻繁にある場合は、できるだけ早めに歯科医院を受診する必要があります。自分に適した治療法を知り、早期に改善を目指しましょう。そのためにも、ぜひこの記事を参考にしてみてください。