スマホによる腱鞘炎とは? 原因・対処法・改善法など徹底解説

十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典

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十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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スマートフォン(スマホ)は、1人1台の時代となりました。電車やバスに乗ると、ほとんどの人がスマホを扱っていますよね。時間があれば、ずっと触っている人もいるはずです。しかし、長時間操作していると、手首・親指を動かすたびに痛みを感じることがあります。実は、スマホによって「腱鞘炎(けんしょうえん)」になる可能性があるのです。本記事では、腱鞘炎の基礎知識・スマホとの関係・改善方法・予防法について説明します。

この記事を読むことで、腱鞘炎とスマホの関係や、改善方法・予防法が分かります。悩んでいる方や気になっている方は、ぜひチェックしてください。

01. 腱鞘炎の基礎知識

まずは、一般的な腱鞘炎について、主な症状・原因・注意点を説明します。

1-1.腱鞘炎とは

腱鞘炎とは、骨と筋肉をつなげる腱(けん)を束ねる腱鞘(けんしょう)が炎症を起こすことです。腱は、骨と筋肉をつなげる繊維性の結合組織となります。腕から指まで束状に何本も通っており、腱が正常に働くことで指の曲げ伸ばしが自由にできるのです。腱鞘炎は、複数の腱を収めている腱鞘が、何かしらの原因で腫れる状態を指しています。この部分が炎症を起こすと、指・手首の曲げ伸ばしが思うようにできなくなるのです。

1-2.主な症状

腱鞘炎は、美容師・ピアニスト・漫画家・作家など、手を動かすことの多い職業に多く発症します。しかし、近年、パソコン・スマホの普及率が上がると同時に、腱鞘炎の患者数が増加しているのです。「パソコン腱鞘炎」「マウス腱鞘炎」「新現代病」とさまざまな名前で呼ばれています。
気になる症状は、手を握ったり、指を曲げ伸ばししたりしたときに痛みが走ることです。安静にしていれば痛みはありませんが、動かすたびにピキッと痛みが走るでしょう。肩こり・肘の痛みを併発しているケースもあります。

1-3.主な原因

腱鞘炎の主な原因は、長時間継続的に使う・一部分への負荷のかけ過ぎ・同じ動作をくり返すことなどです。ほとんどの人が、使い過ぎによる負荷で炎症を起こしています。使いすぎることで、腱鞘が腫れて厚くなったり、腱の表面が傷むのです。さらに、患部へ刺激を与えることになるため、悪循環が生じます。

1-4.腱鞘炎の注意点

腱鞘炎は、なかなか治らないといわれています。なぜなら、腱鞘炎になるのは、体や首などのゆがみや筋力不足のために、腕・指に過度の負担がかかるからです。湿布(しっぷ)や痛み止めの薬・注射は、あくまで一時的な処置で、「体のゆがみ」を改善する必要もあります。
また、症状を放置すると悪化するでしょう。きちんと改善していかなければ状態が悪くなり、手術も必要になるので注意しなければなりません。

02. 腱鞘炎とスマホの関係について

それでは、腱鞘炎とスマホの関係について詳しく説明します。日常でスマホをよく使っている方は必見です。

2-1.腱鞘炎の原因はスマホか?

スマホの扱い方や操作時間などによって、腱鞘炎になる可能性は十分にあり得るでしょう。特に、片手で持って親指で操作していると、腱鞘炎の可能性が高まります。また、片手で持って、もう片方の指(人差し指)で操作する方も、腱鞘炎になりやすいでしょう。

2-2.なぜなるのか?

手首の親指側には、腱が2本通っており、その腱を束ねるトンネル上の管があります。スマホの腱鞘炎は、2本の腱とトンネル上の管に負荷がかかったり、傷ついたりすることで炎症が起きている状態です。炎症で腱が傷つくと、スムーズに手首・指が動かなくなります。
また、手のひらの根元部分にある「手根管(しゅこんかん)」が炎症を起こすこともあるでしょう。手根管は、指を動かす腱を束ねています。スマホを長時間親指で操作すると、手のひら全体が縮み手根管への圧迫が強くなるのです。

2-3.主な症状

スマホが原因の腱鞘炎は、手首・指に痛みが現れます。たとえば、スマホを長時間扱った後に動かすと痛みが走りるでしょう。長時間使用により大きな負荷がかかっている証拠です。また、ドアノブをひねる・髪を洗う・包丁を使う・バッグを持つなど、日常動作でも手首・指に痛みを感じるようになります。

2-4.セルフチェック

スマホによる腱鞘炎かどうか、簡単にチェックする方法があります。以下の順番で、ぜひ試してみてください。

  1. スマホを持つ側の手を開いた状態のまま、親指を中に入れて握りしめる
  2. 力を込めて握りしめたときに、手首・指・肘・腕の痛みがないか確認する
  3. その状態からゆっくり手を広げるときに、指がスムーズに広がるか確認する

以上の流れを試してみて、手を広げる際に「なかなか動かない」「しびれを感じる」場合は、腱鞘炎になっている可能性があります。握りしめるときに痛みを感じる場合も同様です。

03. 腱鞘炎の対処法・改善方法

痛みを感じる場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。いくつか対処法と改善方法について説明します。

3-1.冷やす・温める

痛み始めたら、冷水につけたタオルをしぼって冷やしてください。保冷剤をタオルで包んで冷やすのも良いでしょう。炎症が起きている部分は、熱を持ちます。冷やすだけでも痛みがやわらぐことはありますし、炎症を抑えることができるでしょう。
冷やして痛みが改善したら、温めてください。患部周辺の血行が良くなり、新陳代謝の向上で組織が修復しやすくなります。
ただし、痛み始めから温めたり、急性期を過ぎてから冷やしたりするのは逆効果です。冷やす・温める場合は、タイミングが重要でしょう。

3-2.ストレッチ

腱鞘炎撃退法としてストレッチがあります。まずは、手をグーにして上・下に曲げたり、横に軽くひねったりしてください。ゆっくりストレッチをすることで、血流を促し固まった筋肉がやわらかくなります。特に、スマホをつかむとき・バッグを持ち上げたとき・パソコン作業をしているときに痛みが出る場合に効果的です。
指に痛みがある場合は、以下のストレッチを試しましょう。

  1. 痛みのある指を、もう片方の手指で後ろに引っ張る
  2. そのまま指を左右に動かし、左右どちらか、動かしにくいほうで止める
  3. そのまま90秒間ほどキープする

以上のストレッチは、腱と腱鞘の動きをスムーズにします。動きが良くなれば、炎症を早く取り除くことができるでしょう。
また、手首や指を曲げるときに痛みが出る場合は、以下のストレッチを試してみてください。

  1. 痛みがあるほうの手首を上に向ける
  2. 腕の筋肉をもう片方の手で触りながら痛みがある動きをし、痛みが軽くなるところを探す
  3. 痛みが軽くなるところを持ちながら、手首をクルクルとまわす

上記のストレッチは、手首をとおる腱(けん)の動きをスムーズにできる動作です。血液の流れが良くなるため、痛いところに必要な栄養素が行き届くでしょう。

3-3.薬について

腱鞘炎の主な治療は、薬と湿布です。痛みがひどい場合は、鎮痛剤を使用します。市販薬もありますが、できれば医師の処方を受けてください。痛みが強い場合は、ステロイド注射を使うこともあります。鎮痛剤と湿布薬によって痛みを緩和し、炎症を徐々に取り除いていく対症療法が主体です。

3-4.サポーター

患部を冷やした後、サポーターやテーピングなどでしっかり固定してください。腱鞘炎が起きているときは、むやみに動かしてはいけません。ただし、テーピングで、かぶれてしまうことがあります。皮膚が弱い方は、サポーターで固定すると良いでしょう。
また、腱鞘炎用に使われるサポーターは、症状によって異なります。主な種類は、以下の3つです。

リストバンド型:手首が痛いときに使う。手首に巻きつけるタイプ
親指サポート+リストバンド型:親指を動かすと手首が痛いときに使う。親指と手首のサポートが一体化したタイプ
指関節サポート型:指をスムーズにのばせないときに使う。指の関節に巻きつけるタイプ

薬局などで購入するのも良いですが、病院でサポーターを貸してくれるところもあります。症状に合ったサポーターを選びたい・アドバイスが欲しいという方は、病院に相談したほうが良いでしょう。

04. 腱鞘炎にならないための予防法

日常生活の過ごし方によって、腱鞘炎を予防することができます。誰もが簡単にできる予防法について、チェックしていきましょう。

4-1.手首指のストレッチをする

先ほど説明した、手首指のストレッチが予防法として効果的です。「使いすぎたな」「疲れたな」と感じたときは、手を休めてストレッチをしてください。パソコン・スマホを長時間使う方は、一部分の筋肉しか使わないので固くなっています。固まると血流が悪くなるため、ストレッチで解消することが大切です。ただし、無理のない程度で、痛みが出たときは動かさないようにしましょう。

4-2.休める

スマホによる腱鞘炎は、手・指の使い過ぎが主な原因です。そのため、安静と休養が第一の予防といえるでしょう。たとえ、治療をして症状が良くなったとしても、使い過ぎれば再び炎症が起きてしまいます。日常で手をなるべく使わないことは難しいかもしれませんが、なるべく安静にしてください。たとえば、スマホゲームをするときは、時間を決めるなど工夫が大切です。

4-3.そのほか

腱鞘炎は、自律神経やホルモンバランスの乱れによって起こりやすくなる傾向があります。自律神経は体液の循環に関わるため、乱れが生じると治りが遅くなるでしょう。特に、ストレスは自律神経の乱れにつながるので要注意です。適度な運動でストレス解消・睡眠時間の確保・栄養バランスの良い食生活など、規則正しい生活を送ってください。

4-4.やってはいけないこと・注意点

痛みがあるのに、無理に動かしたり、そのままスマホを操作したりしてはいけません。炎症がひどくなり、激しい痛みが出てくるようになります。痛みが出たときは、1度病院で診察を受けたほうが良いでしょう。しっかり検査を受けてから治療を始めれば、早く改善できる可能性があります。

05. 腱鞘炎に関してよくある質問

腱鞘炎に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.手術が必要なケースとは?
A.塗り薬・ステロイド注射でも効果がない場合は、腱鞘切開という手術を行うことがあります。腫れている腱鞘を切開して、指が曲がるようにする方法です。手術にかかる時間は30分程度なので、日帰りでも受けられるでしょう。

Q.物理療法とは?
A.患部にレーザーを当てることで、皮膚下にある炎症を抑える方法です。レーザーを照射すると血流が促されるため、炎症箇所の早期回復につながるでしょう。セルフケアや薬物療法をしても痛みが軽減できない場合は、レーザー治療も選択肢の1つです。

Q.日常生活で気をつけておきたいこととは?
A.手指の使い過ぎだけでなく、体のゆがみが原因になっています。そのため、日常生活では姿勢に注意してください。立つ・座るときは、猫背にならず背筋をまっすぐとした姿勢を保ちましょう。また、長時間扱う場合は、途中で休憩を入れて、ストレッチをすることも大切です。

Q.腱鞘炎と関係する内臓の状態とは?
A.内臓の状態で体の調子も大きく変わります。たとえば、肝臓の位置が悪いと、内臓を保護するような体勢になってしまうので自然と猫背になりがちです。姿勢が悪くなれば、体液の循環・神経の通りが悪くなり腱鞘炎になることがあります。内臓が悪い状態のときは治りも遅くなるため、規則正しい生活を心がけてください。

Q.どの診療科を受診すべきか?
A.腱鞘炎の疑いがあるときは、整形外科を受診してください。どこに痛みがあるのか、何をすれば痛みが走るのかなど、問診・検査によって判断することになります。診察を受けるときは、症状を具体的に伝えてくださいね。

06. まとめ

いかがでしたか? スマホで手指を使い過ぎることで、腱鞘炎になることがあります。近年、普及率が上がり、スマホによる腱鞘炎が増えてきているのです。痛みが出たときは、安静第一に冷やす・温める・固定するなどの対処法を試してください。そして、適度に休憩を入れてストレッチをするなど、血液の循環を良くすることが大切です。日々の生活できちんと心がけておけば、腱鞘炎を防ぐことができるでしょう。