鏡の前で「ベー」っと舌を出したとき、表面が真っ白でびっくりした……そんな経験はありませんか? 白い舌は、見た目がよくないだけではなく不健康な感じがしますよね。そのため、ひそかにお悩みの人も少なくありません。普通、舌は薄いピンク色をしていますが、白い苔(こけ)のようなものにおおわれている人もいます。それが「舌苔(ぜったい)」と呼ばれているものです。舌苔(ぜったい)は、口臭の原因にもなり、病気がひそんでいることもあります。そこで、舌苔(ぜったい)の基礎知識・原因・改善や予防方法などをご紹介しましょう。
この記事を読むことで、舌苔(ぜったい)に関するいろいろなことがおわかりいただけると思います。お悩み解決のために、ぜひ役立ててください。
01. 舌苔の基礎知識
笑ったり話したりするときに意外と目立つのが「舌」です。その舌が、舌苔(ぜったい)におおわれて白くなっていると気になりますよね。舌苔(ぜったい)の改善や予防をするためにも、まずは「舌苔(ぜったい)とはどのようなものなのか」という基礎知識を学びましょう。
1-1.舌苔とは
通常、健康でトラブルがない人の舌は「赤みを帯びた薄いピンク色」です。けれども、舌が白い苔(こけ)状のものでおおわれている人もいます。それが、「舌苔(ぜったい)」です。
舌には、「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という小さな突起が一面に立っているのでツルツルではなくザラザラしています。そのため、食べかすや舌粘膜からはがれた細胞などが付着しやすいのです。それらを細菌が食べてできるのが「舌苔(ぜったい)」となります。歯につく「歯こうが舌についたもの」とイメージするとわかりやすいでしょう。
1-2.舌苔の症状
舌苔(ぜったい)には、いくつか種類があります。真っ白な苔(こけ)状の汚れが舌全体(もしくは一部)につくのが代表的な症状です。また、黄ばんだ色の舌苔(ぜったい)・まばらな模様の地図舌苔(ちずぜったい)・部分的につく黒い舌苔(ぜったい)、黒毛舌(こくもうぜつ)などもあります。痛みやかゆみなどの症状を感じることはありません。
02. 舌苔の原因について
舌苔(ぜったい)の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
2-1.主な原因
2-1-1.不衛生な口くう内
食後や就寝前に歯みがきをせず、口くう内を不衛生にしていると、食べかすや舌粘膜からはがれた細胞などが舌乳頭にたまり舌苔(ぜったい)の原因になります。そのため、自分で口くう内の手入れができない、寝たきりの高齢者などは舌苔(ぜったい)ができやすくなるのです。
2-1-2.ドライマウス
口呼吸が習慣になっている人、ドライマウスでだ液が少ない人は、舌苔(ぜったい)ができやすくなります。だ液は口くう内を掃除し汚れを洗い流す役目があるため、減ってしまうと汚れや細菌が舌の上にたまりやすくなるのです。
2-1-3.ストレス
日常生活で強いストレスや不安を抱えていると、舌苔(ぜったい)が増えることがあります。自律神経のバランスが乱れ交感神経が優位になる状態が続くと、だ液の分泌に悪影響を及ぼし、ドライマウスになってしまうのです。
2-1-4.体調不良や睡眠不足などによる免疫力の低下
体調不良や睡眠不足などの状態が続くと、免疫力が低下します。そのため、普段は抑えられている細菌が活性化して増殖し舌苔(ぜったい)ができやすくなるのです。
2-1-5.加齢
個人差はありますが、加齢によりだ液が減少したり免疫力がおとろえたりすることで舌苔(ぜったい)ができやすくなります。
2-1-6.薬
抗生物質やステロイド剤を長期間服用することにより、口くう内の細菌の種類が変化します。そして、カビ菌の一種であるカンジタ菌が増え、黒毛舌(黒い舌苔(ぜったい))になるといわれているのです。
2-1-7.アルコールや喫煙
毎日アルコールを摂取したりタバコを吸ったりする習慣があるとだ液が減少します。そのため、口くう内が乾燥してドライマウスになるのです。
2-2.舌苔の正体
「1-1.舌苔(ぜったい)とは」でも挙げましたが、舌苔(ぜったい)の正体は、食べかすや舌からはがれ落ちた粘膜細胞、ぶどう状細菌や連鎖状細菌、白血球などのかたまりです。
2-3.舌苔の注意点
舌苔(ぜったい)は痛みを感じません。そのため、放置している人もいます。けれども、注意しなればならないこともあるのです。
2-3-1.口臭
口臭の成分の1つ「硫化水素」は、口くう内の細菌が、食べかすや上皮カス(はがれた粘膜)を腐敗させることで発生します。舌苔(ぜったい)は口臭の原因になるのです。
2-3-2.内臓の病気の可能性
だ液の分泌は、自律神経の影響を受けます。そして、自律神経は内臓の働きもコントロールしているのです。そのため、内臓の調子が悪くなると唾液が減少し、口くう内の乾燥を招きます。
昔から、医師が診察をするとき患者の舌の状態をチェックするように「舌は胃腸の状態を映し出す鏡」なのです。舌苔(ぜったい)や口臭などが気になる場合は、内科を受診することをおすすめします。
2-4.舌苔に関連する病気
舌苔(ぜったい)と関連する病気に「口くうカンジタ症」があります。口くう内の常在菌の1つ「カンジダ菌」というカビによる感染症です。口くうカンジタ症は、偽膜(ぎまく)性カンジダ症・萎縮性カンジダ症・カンジダ性口角炎・肥厚性カンジダ症などの種類があります。その中で、舌苔(ぜったい)と症状が似ていて、一番多いのが偽膜性カンジダ症です。
2-4-1.偽膜性カンジダ症
偽膜性カンジダ症は、舌や唇などに点や線、斑紋(はんもん)状の白い苔(こけ)がつく病気です。舌苔(ぜったい)と同じように痛みはほとんどありません。苔(こけ)部分をガーゼなどでふき取るとはがれ、はがれた後には「びらん」や「発赤(はっせき)」があり、放置すると口くう内全体に広がります。カンジダ菌は健康なときには増殖しないのですが、免疫力が低下すると感染しやすくなるのです。
03. 舌苔のセルフチェック
東洋医学では、舌の色・形・動き・舌苔(ぜったい)の状態を観察する「舌診(ぜっしん)」という診察方法があります。自分でも鏡を見て、舌の健康状態をチェックしましょう。
3-1.舌の色や舌苔を見る
舌全体を見たときに、真っ白で厚みのある舌苔(ぜったい)が、舌全体をおおっているか、もしくはところどころ地図状にできていないかをチェックしましょう。
舌苔(ぜったい)は、軽度のうちは舌の中心から奥にかけて白い苔(こけ)がつく状態です。舌先はピンク色のままですが舌の中央部に溝ができます。中度になると、舌の中央から奥にかけて分厚い舌苔(ぜったい)がつき、重度になるとさらに分厚く真っ白な舌苔(ぜったい)が舌をおおってしまうのです。また、「1-2.舌苔(ぜったい)の症状」で挙げた黄色いや黒い舌苔(ぜったい)がないかも確認してください。
3-2.舌の形と状態
- 舌全体が腫れぼったい:体が冷えていたり疲れがたまっていたりする
- 舌の横に歯型がついている:水分の代謝が悪くむくんでいる
- 舌先から中心に向かい筋が入っている:体の水分や血液が足りない
3-3.セルフチェックの注意点
自分で舌診(ぜっしん)をする場合は、毎日同じ場所・照明・時間に行ってください。また、舌は蛍光灯の下では紫っぽく、白熱灯の舌では黄色っぽく見えるので太陽光の舌でチェックするようにしましょう。コーヒーや色付きキャンディーなどを食べた後は舌に色がつくことがあります。食後すぐの舌診(ぜっしん)は避けましょう。
3-4.健康な舌とはどんな状態か
健康な舌は、全体的に淡いピンク色です。そして、全体に薄く白い膜が張っているように舌苔(ぜったい)がついています。ただし、舌先と舌の周辺(側面やふち)にはなく、舌先1センチくらいの部分から薄い舌苔(ぜったい)がついているのがベストな状態です。
04. 舌苔の改善・予防方法
舌苔(ぜったい)の改善・予防方法をご紹介しましょう。
4-1.舌磨きはいいか悪いか
舌苔(ぜったい)が気になるからと、舌ブラシや舌クリーナーで「舌磨き」をする人もいます。けれども、やりすぎは禁物です。「1-1.舌苔(ぜったい)とは」でも挙げたように、舌には、「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という小さな突起が一面に立っていて、まるでじゅうたんのようになっています。そこをブラシやクリーナーで磨き過ぎると舌を傷つけてしまうだけではなく、舌苔(ぜったい)が悪化してしまうこともあるのです。また、味覚障害を起こすこともあるので十分に注意しましょう。
4-2.口を乾燥させない
だ液が出るようにして、口くう内が乾かないようにしましょう。耳下腺(じかせん)・顎下腺(がっかせん)・舌下腺(ぜっかせん)という「三大だ液腺」をマッサージで刺激してだ液の分泌をうながしてください。
- 耳下腺:左右の耳の下に指の腹を当て後ろから前へゆっくりと回すようにもみほぐす
- 顎下腺:下顎の骨の内側に指を当て、耳の下から顎の先までやさしく押す
- 舌下腺:人さし指を横にして下唇に当て、親指を顎の下のくぼみに当てもみほぐす
それぞれ、各1分ほど行いましょう。
4-3.よくかむ
食事のときは、かき込まないでよくかんで食べましょう。かめばかむほど、だ液が出るので口くう内を清潔に保ちます。
4-4.舌を動かす
舌をよく動かすことも舌苔(ぜったい)予防には大切です。舌の筋肉を維持でき、表面の自浄作用も期待できます。また、だ液腺も刺激することになるので一石二鳥です。
- できるだけ口を大きく開けて舌を意識的に動かす
- 口を閉じて、舌を左右に大きく動かしほおを内側から押してふくらませ、「唇と歯ぐき」「ほおと歯ぐき」の間に舌を入れてゆっくり回す
上記の運動を続けてだ液の分泌量を増やしましょう。
4-5.免疫力を高める
免疫力をアップして、口くう内細菌の増殖を防ぐことも大切です。適度な運動や十分な睡眠で体に疲れをためないようにしましょう。また、免疫力を高める抗酸化作用のある食品を日常的に取り入れてください。食物繊維・ミネラル・ビタミンが豊富な野菜や海そう類や、納豆・ヨーグルト・漬物などの発酵食品を積極的に食べましょう。
4-6.そのほか
舌苔(ぜったい)を作る口くう内の常在菌は「酸性の食べ物」を好みます。酸性の性質を持つ食べ物は、お菓子などの糖質や肉・魚・卵などの動物性たんぱく質です。お菓子やファストフードなど糖質の多い食生活を続けている人は、舌苔(ぜったい)が多い可能性が高くなります。
05. 舌苔について〜よくある質問〜
舌苔(ぜったい)の改善や予防についてよくある質問をご紹介しましょう。
Q.舌苔(ぜったい)の原因になる「ドライマウス」を改善するには、口をこまめにうるおすことが大切だそうですが何を飲めばいいでしょうか。
A.一番いいのは「水」です。緑茶やウーロン茶などは殺菌作用のある「タンニン」をふくんでいるので細菌の繁殖を防ぎます。そのため、口臭予防効果があるので食後に口をゆすぐのには最適です。しかしながら、カフェインは口の乾燥を招いてしまいます。口くう内をうるおす目的でこまめに飲むなら、水のほうがおすすめです。
Q.舌の健康状態をチェックしてもらうのは、何科に行けばいいでしょうか。
A.内科(胃腸科)・耳鼻咽喉科・歯科・口くう外科などで診察を受けてください。また、口くう内が不衛生な状態でいると舌苔(ぜったい)の原因になります。定期的に虫歯や歯周病などのチェックをしていない人は、歯や歯ぐきの状態を診察してもらうために、まずは歯科に行くのもおすすめです。
Q.舌苔(ぜったい)予防のためにオーラルケアをしたいのですが、仕事が外回りで歯みがきができません。いい方法はありますか。
A.1番簡単なのは、食後に水やお茶で「ブクブクうがい」をする方法です。うがいだけでも口くう内に残っている食べかすを除去することはできます。お茶は糖分の入っていない緑茶やウーロン茶などがおすすめです。また、市販のオーラルシート(歯みがきシート)を使うのもいいでしょう。ただし、オーラルシートで舌を磨くのはNGです。
Q.簡単にできるだ液腺を刺激する運動を教えてください。
A.「4-2.口を乾燥させない」でご紹介しただ液腺マッサージをしてみましょう。また、簡単にできるのは口を動かす発声体操です。「パタカラ、パタカラ」と繰り返すパタカラ体操や、「アイウエオ」を早口でくりかえるアイウエオ体操を行ってください。できれば、食事前に行うのが理想的です。
Q.舌苔(ぜったい)や口臭を防ぐためにマウスウォッシュを使っていますが、大丈夫でしょうか。
A.マウスウォッシュの効果を上げるためには、まず正しい歯みがきをすることが大切です。マウスウォッシュだけで歯こうを除去することはできません。ていねいなブラッシングで歯こうを落としてから使いましょう。また、過度にマウスウォッシュを使うのも避けてください。刺激の強いアルコールや、合成着色料・香料・保存料など、添加物を使用していない製品を選びましょう。
06. まとめ
いかがでしたでしょうか。舌苔(ぜったい)の正体や原因、予防・改善方法などがおわかりいただけたかと思います。舌苔(ぜったい)は、見た目の問題だけではなく口臭の原因にもなりますし、病気の可能性も考えられるのです。舌苔(ぜったい)が気になるあまりに無理なブラッシングをする人もいますが、余計悪化することもあるのでやめましょう。正しい方法で予防・改善してくださいね。