「歯の根元が黒ずんでいる」「欠ける、削れている」と感じる方は、もしかしたら虫歯が原因かもしれません。虫歯の初期は自覚症状や痛みがほとんどないのが特徴です。しかし、虫歯が進行して歯の表面のエナメル質を溶かすと、黒ずみが目立ち始めます。また、歯の根元の黒ずみは、虫歯のほかにも原因が隠れているおそれがあるのです。早めに治療を受けなければ、自分の歯を失ってしまうという最悪なケースに陥る可能性もあるでしょう。
本記事では、歯の根元が黒ずむ原因と治療方法を詳しく解説します。
この記事を読むことで、歯の根元の虫歯を治すために必要な知識が身につきます。治療法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.歯の根元の虫歯は?
歯の根元の色が変化するのは、何かしらの異変のサインかもしれません。なぜ歯の根元が黒ずんでしまうのか、虫歯が関係しているのかなど、その原因を解説します。
1-1.歯の根元の黒ずみは虫歯?
歯の根元の黒ずみは、虫歯・汚れ・かぶ(かぶ)せものの露出や劣化・歯石(しせき)などさまざまな原因が考えられます。それぞれピックアップしながら説明しましょう。
1-1-1.虫歯
さまざまな原因の中でも特に多いのが「虫歯」です。歯の表面はエナメル質の膜で保護されていますが、虫歯菌が創り出す酸によって溶けてしまいます。基本的に、唾液中に含まれているカルシウム・リンなどのミネラルを取り込むと、溶け出した歯の表面が元に戻るのです。しかし、唾液の分泌よりも虫歯菌の増殖スピードが上まわると虫歯になり、症状が進行し歯の根元が黒ずみます。初期段階のうちにきちんとブラッシングを行えば、再石灰化の作用が活性化し自然治癒が可能でしょう。ただし、歯の根元が黒ずんだ状態は、歯科で適切な治療を受ける必要があります。
1-1-2.汚れ
コーヒー・ワインなど色素が強い食べ物を頻繁に摂(と)ったり、タバコを吸ったりする習慣があると、歯の根元に「ステイン」と呼ばれる着色汚れが蓄積されていきます。歯と歯の間や歯と歯茎の境目は汚れがたまりやすいところなので、黒ずんで見えることがあるのです。
1-1-3.かぶせものの露出や劣化
治療してかぶせものをした歯の根元が、数年経過して黒ずむケースがあります。これは、加齢によって歯茎が下がりかぶせものの内側に使われていた金属が露出したことが原因です。また、かぶせものに使用した金属の成分が歯茎に流出し黒ずんだ、劣化して少しずつ黒くなったということもあります。かぶせものをした部分が黒ずんでいる場合は、露出と劣化の可能性が高いでしょう。
1-1-4.歯石
歯と歯茎の境目が黒ずんでいる場合は、歯石が関係している可能性があります。歯石とは、歯垢(しこう)=プラークが唾液と混じり合って固まったものです。一般的に、白色をしていますが、歯茎の内側に歯石ができた場合は、血液の成分による影響で黒くなります。
1-1-5.そのほか
ほかには、「歯周病」と呼ばれる病気が隠れていることがあります。歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患のことです。歯と歯茎の境目に虫歯菌が蓄積されると、その周辺が炎症を起こし赤く腫れ上あがります。進行する歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の境目が深くなり、歯を支えるための土台(歯槽骨)が溶けて歯茎が下がるのです。最終的に、歯が動いたり、抜け落ちたりする可能性が高まります。
1-2.歯の根元にできる虫歯の特徴は?
歯の根元にできる虫歯は、すでにエナメル質が虫歯菌で溶かされている状態です。少しずつ痛みが出てきたり、食べ物を口に含むとしみたりするようになります。また、歯茎にまで細菌が及んでいる可能性があるため、ピンク色の歯茎が黒ずむこともあるでしょう。虫歯菌が進行しエナメル質の下層にある象牙質まで侵されると、「しみる」症状が強く現れるようになります。
1-3.重症のケースもあるの?
歯の根元まで虫歯菌で侵されると、歯の神経まで達することになります。その結果、激しい痛みにおそわれ、我慢するのも辛(つら)くなる状態が続くのです。すでに、神経が壊死している場合は痛みは感じません。しかし、このまま放置すると、歯の根元に膿(うみ)がたまり、激しい痛みにおそわれるようになるため、早めに膿と死んだ神経を除去することが大切です。
2.歯の根元にできた虫歯の治療方法
歯の根元にできた虫歯の治療方法を、軽症と中症・重症に分けて解説します。
2-1.軽症の場合
痛みやしみるなどの自覚症状がなく、歯の表面が白くにごっている状態は、虫歯の初期段階です。この場合の治療法は、フッ素塗布や正しいブラッシングを続けることで治る可能性があります。歯の表面が虫歯菌に溶かされ黒ずんでいる状態なら、変色している部分を削り、歯科用プラスチック(レジンなど)で密閉し虫歯菌の侵入を防ぐ治療を行うのです。
2-2.中症、重症の場合
歯に大きな穴が開いたり激しい痛みが伴ったりする状態は、中症の可能性があります。この場合は、虫歯に汚染された歯や歯の内部を取りのぞく「根管治療」を行うことになるでしょう。根管治療後は、かぶせもので歯を補います。
また、歯の根っこの部分まで虫歯に侵されてしまうと根管治療では対応できません。ほとんどのケースで抜歯が必要になるでしょう。抜歯後は、入れ歯・インプラント・ブリッジという治療で歯の機能を回復させます。
3.歯の根管治療はどんな内容?
では、歯の根管治療とは具体的にどのような治療法なのでしょうか。
3-1.歯の根管治療の難しさ
神経が虫歯菌で侵されると歯を抜かなくてはならない可能性が高まりますが、抜歯は全体の歯並びに大きく影響します。そこで登場したのが、抜歯をせずに虫歯菌で侵された部分だけ除去できる「根管治療」です。しかし、歯の根元や歯茎の中は複数の神経が通っており、細かい部分でもあるので治療している場所が直接見えません。つまり、歯の根の中は細く複雑でライトも届かないので、目で直接見ながらの治療が困難なのです。リスクの高い根管治療を避けるためにも、早めの段階で治療を行うことが大切なポイントとなります。
3-2.根管治療(歯内治療)とは?
根管治療は歯内治療ともいわれ、虫歯に汚染された部分だけを丁寧に取りのぞき、歯の根元を遺して歯を保存する治療法となります。歯の根の中の神経や血管が通っている管を「根管」といい、歯の成長発育に重要な役割を担っている部分です。この根管が虫歯・歯の亀裂・外傷などで細菌に侵されると炎症を起こし、歯茎が腫れ炎症が周囲に広がります。
根管治療は、傷んだ歯髄(しずい)の部分を除去して、根管を注意深く清掃し再発の感染を防ぐために根の中に詰めものを入れる方法です。神経が虫歯で侵された、治療後に再び感染してしまった場合も、根管治療が行われることがあります。
3-3.根管治療の主な流れ
根管治療を受ける前に知っておきたいのが、具体的な治療の流れです。まずは、治療前に口の中と歯の状態の精密検査を行わなければなりません。レントゲン撮影・CT撮影などの画像診断で目に見えない部分がどのような状態なのかを正確に把握します。カウンセリングをしながら具体的な治療方針を決めた後は、以下の流れで根管治療が行われるでしょう。
- 抜髄(ばつずい):麻酔をし、専用器具で虫歯など歯の表面部分を除去した後に歯髄を除去する
- 根管の中の清掃・消毒:抜髄後は根管の中の汚れを完全に取りのぞく。空洞になった根管の長さを機械で測定した後は、薬で洗浄し消毒する
- 根管の中に薬を重鎮:炎症が強い場合は根管の中に薬剤を入れて、仮のふたをして密封し数日間置く。根管の中がキレイになるまで、洗浄と薬剤の注入をくり返す
- 詰めものをする:完全に根管内がキレイになったら、ゴムのような詰めものを詰め込む
- 土台を立てる:詰めものをした根管の上に、歯の補強や根管内への細菌の侵入を防ぐための土台をつくる。
- かぶせものをする:土台を立てたら、クラウン・かぶせものと呼ばれる人工の歯をかぶせる
3-4.主なメリット
根管治療の大きなメリットは、自分の歯が残せることです。重症の場合をのぞき、歯の神経が虫歯菌で侵されていても、歯を保存しながら細菌を取りのぞくことができます。破壊された歯でも根管治療で保存でき、もとの歯と同じく永く機能し続けることが可能です。
3-5.歯科の選び方
前述した通り、根管治療は困難な治療法なので失敗するケースがよくあります。そのため、きちんとした根管治療が受けられるか否かは、歯科の選び方にかかっていると言えるでしょう。最近では、顕微鏡で直視しながら行う根管治療が採用され始めています。顕微鏡は細かい部分まで見ながら治療できるため、成功率が格段に高くなるのです。また、歯科選びに悩む際は、以下のポイントに注目するとよいでしょう。
- 抜かない削らない虫歯治療に力を入れているか
- 治療前にCT撮影などの検査をきちんと行うか
- 1人1人を丁寧に診察しているか
- 歯の状態や治療法について細かく説明するか
- 具体的な治療費を提示しているか
- 口コミ・評判がいいか
4.歯の根元の虫歯に関してよくある質問
歯の根元の虫歯に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.かぶせものにはどんな種類があるの? 黒ずみやすいのは?
A.金属・プラスチック・セラミックなどさまざまな種類があります。中でも、黒ずみやすくなるのは「金属製のかぶせもの」です。また、差し歯の内側の金属部分が溶けだして歯茎に沈着し、黒ずむこともあります。歯とセラミックとの境目が歯周病などで歯茎が下がると、歯根が露出したり差し歯と歯茎の境目に虫歯ができたりしがちです。それが黒ずみとして現れることもあります。
Q.根管治療の費用相場は?
A.根管治療は、保険が適用される治療と適用されない自由診察の治療があります。保険が適用される場合は、3割負担で根管の数が1つにつき約1,500~3,000円です。根管の数が増えるほど負担額が大きくなるでしょう。保険が適用されない自由診察の場合は、10万~100万円かかる可能性があります。どちらになるのかは、歯科で異なるので治療前に確認しておきましょう。
Q.根管治療に痛みはあるの?
A.根管治療が必要な状態は、歯髄を抜かなければならないくらい虫歯が進行している状態です。そのため、炎症による歯茎の腫れで痛みを感じることが多く、根管治療を受ける前の痛みはあるでしょう。基本的に、治療は麻酔をするので痛みは感じませんが、治療後は麻酔が切れて痛みを感じることがあります。薬剤や根の清掃をしたときの刺激が痛みとなるので、処方された痛み止めを飲んでおけば自然と治まるでしょう。しかし、しばらく経過しても痛みが続く場合は、歯周組織が再び細菌感染を起こしている可能性があります。そんなときは、治療を受けた歯科に相談すべきでしょう。
Q.歯周病の症状は?
A.ピンク色をしていた歯茎が赤く腫れ上がり、歯と歯の間の歯肉が丸みを帯び膨らみます。ブラッシングをすると出血することが多くなり、腫れた歯と歯肉との間に歯垢がたまり悪化するでしょう。進行すればするほど、どんどん歯茎が下がり歯が長く伸びたように感じます。冷たいものを口に含むと激しくしみるようになるでしょう。
Q.根管治療が困難なケースは?
A.歯の神経が死んでいるケースは、抜歯が必要になることがほとんどです。根管治療では補えないほど虫歯が進行しています。また、ほかの部分よりもより根管内が複雑になっている前歯も、根管治療が困難なケースがあるので要注意です。
まとめ
歯の根元が黒ずんでいる場合は、虫歯以外にもさまざまな原因が考えられます。ほとんどの原因は虫歯となるため、進行を防ぐための治療が必要です。すでに、根管まで虫歯菌に侵されている場合は、その中をキレイに除去し清掃しなければなりません。その際に使われるのが、歯を保存しながら細菌が除去できる「根管治療」です。根管治療は複雑な根管をキレイにするという困難な方法ですが、実績を持つ歯科なら安心して治療が受けられるでしょう。信用できる歯科を選ぶためにも、ポイントを押さえることが大切です。