腱鞘炎は漢方で改善できるの? 漢方の効能や正しい飲み方・注意点

指がこわばったり、手首が痛くて動きにくかったりする場合、もしかするとそれは「腱鞘炎(けんしょうえん)」になっているかもしれません。腱鞘炎は、手指の使いすぎが原因で、関節周囲に炎症が起きている状態です。症状を改善するために、まずは、炎症を抑えなければなりません。その際に効能を発揮するのが、漢方薬です。本記事では、漢方薬を使用した腱鞘炎の改善方法などを解説します。

  1. 腱鞘炎の原因は?
  2. 腱鞘炎の対処法と治療法
  3. 漢方における腱鞘炎の考え方
  4. 腱鞘炎に用いられる漢方薬とポイント
  5. 腱鞘炎に関してよくある質問

この記事を読むことで、腱鞘炎に用いる漢方薬の種類と漢方のポイントなどが分かります。症状に悩んでいる方はチェックしてください。

1.腱鞘炎の原因は?

まずは、腱鞘炎の症状やメカニズム、原因などをチェックしておきましょう。

1-1.腱鞘炎は腱鞘が通過障害を起こしている状態

腱鞘という組織が何らかの原因で痛みや通過障害(筋肉がゆるまず広がらない)を起こしている状態が、腱鞘炎です。腱鞘とは、骨と筋肉をつなげる繊維状の「腱」を鞘(さや)のように包み保護する組織を指します。腱鞘は手指を伸ばしたり、腱の動きをなめらかにしたりと、重要な部位です。この部分が使いすぎなどの原因で炎症を起こすと、筋肉が衰えて萎縮し神経が圧迫されます。手指を動かすときに痛んだり、動かしにくかったりという症状が起こるのです。痛みや腫れが代表的な症状となります。

1-2.手指をよく使う人が腱鞘炎になりやすい

漫画家・イラストレーター・作家など、手指をよく使う人が腱鞘炎になりやすい傾向があります。パソコンの作業・文字の書きすぎ・楽器の演奏・仕事でよく手指を使う人などは、特に注意しておいたほうがいいでしょう。また、女性ホルモンの影響もあるといわれているため、妊娠や出産期の女性・更年期障害の人も当てはまります。ほかにも、糖尿病・人工透析・関節リウマチの人も起こりやすい症状です。

1-3.主な原因は手指の使いすぎと質の変化

腱鞘炎の主な原因は2つあります。
1つ目は、手指の使いすぎです。前述したように、手指をよく使う人は腱鞘に大きな負担がかかるため、炎症が起きやすい状態になっています。手首の親指側と腱・腱鞘に炎症が起こる「ドケルバン病」、キーボードを打つ・楽器を演奏するなどの動作に関連する「バネ指」が発症するでしょう。バネ指では、指がスムーズに曲げることができず、跳ねるような動きになります。
2つ目は、腱鞘の質が変化することです。たとえば、腱鞘がむくんで厚みが増したり、硬くなったりします。質の変化は、糖尿病や加齢が関係していることが多いのです。

1-4.放置すると慢性的疾患に発展するリスクが高まる

腱鞘炎は「いつか治るだろう」と放置すると、重症化してしまい慢性的な疾患に発展する恐れがあります。慢性化してしまうと、常に手指の痛みを感じ、日常生活に支障をきたしてしまうでしょう。そうならないためには、初期の段階で正しい治療を受ける必要があります。指が曲げづらいなどちょっとした違和感を覚えた時点が初期症状なので、気をつけましょう。

2.腱鞘炎の対処法と治療法

では、腱鞘炎の対処法と治療法について具体的に説明します。

2-1.安静にすることが1番大事

自分でできる対処法としては、なるべく手指を使わず安静にすることです。腱鞘炎が起きるほとんどの原因は、手指の使いすぎによる負荷となります。そのため、炎症が起きている患部を休ませ、炎症が引くのを待つことが1番の治療になるのです。初期であれば、タオルなどに氷を包んで患部に当てましょう。ほかにも、湿布を貼る方法があります。早めに対処することで、それ以上悪化することなく、自然と腫れや痛みがやわらぐでしょう。

2-2.痛みが治らない・激しい痛みの場合は受診すべき

初期症状の段階で安静にすれば、痛みは自然と消え去るでしょう。しかし、いくら患部を冷やしても痛みが治まらない・我慢できないほどの激しい痛みが起きている場合は、受診すべき状態です。すでに、慢性化している可能性があるため、自己対処では限界があります。また、腱鞘炎の治療法を誤ると、さらに悪化させる恐れがあるため、医師に診てもらった上で正しい治療を行ったほうがいいでしょう。

2-3.安静と痛み・腫れを抑える治療法

腱鞘炎は、安静と痛み・腫れを抑える治療法が一般的です。手指は日常で無意識のうちに使う場所なので、テーピングで固定し使わないようにします。ただし、過度な固定は関節が硬くなってしまうため、正しく固定することが必要です。また、関節をゆるめるためにストレッチをしたり、慢性化している場合は温めたりする方法もあります。
痛みや腫れには、主に、軟膏(なんこう)や湿布などの外用剤を使い、症状によってはステロイド注射で炎症を抑えることもありることもあるのです。ステロイド注射でも治まらない場合は、手術を行い、腱鞘を切開する方法もあります。日帰りまたは1泊の入院で手術可能で、約7〜10日で抜糸となるでしょう。手術は比較的症状が改善されやすいといわれています。ただし、再発例もあるので、手術後の手指の使いすぎには注意したほうがいいでしょう。

3.漢方における腱鞘炎の考え方

漢方では腱鞘炎をどのように考えるのでしょうか。

3-1.自己回復・自己治癒させることが目的

漢方薬は、自己回復・自己治癒が大きな目的です。自然由来の生薬が何種類も組み合わさっているものが漢方薬で、生薬には炎症を抑える・痛みをやわらげるなど腱鞘炎の症状にアプローチできる種類がいくつもあります。腱鞘炎の特徴ともいえる痛みは、炎症によって起きていますが、漢方では「血」の異常が関係していると考えられているのです。ある組織の血流量が通常より少なくなることで、鋭い痛みとなります。この状態を「血虚(けっきょ)」といい、漢方では血の異常を改善させることが1番のポイントとなるでしょう。

3-2.体に負担をかけたくない方におすすめ

前述したように、漢方薬は何種類もの生薬が組み合わさっているものです。生薬は自然由来でできているので、体への負担をかけずに、血の流れをよくしたい方は、漢方薬をおすすめします。また、腱鞘炎を何度も繰り返している方にもおすすめです。1番の原因は、手指の使いすぎにありますが、血の巡りが関係している可能性もあります。その際は、漢方薬で血の流れをよくし、血・気・水の3つのバランスを整える必要があるでしょう。

3-3.症状と体質に合った漢方薬であることが大事

漢方薬の効能が期待できるから、と適当な種類を選ぶのはNGです。漢方薬はさまざまな種類があり、その人の症状や状態・体質合った種類を選びます。症状や体質に合っていない種類を服用すると、痛みがさらにひどくなったり吐き気をもよおしたりなどの副作用が起きることもあるのです。症状と体質に合った漢方薬を選ぶために、漢方に詳しい漢方薬局に相談しましょう。

4.腱鞘炎に用いられる漢方薬とポイント

腱鞘炎に用いられる漢方薬の種類と、漢方薬局に相談する際のポイントを解説します。

4-1.桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

関節痛・神経痛などによく用いられる漢方薬です。関節が痛んで曲げ伸ばしがしづらい症状のほか、冷えがあったり、汗が出るのに尿の出が悪い場合にも適しています。痛みの改善を目的に、筋肉の腫れや炎症による痛みに対して有効な漢方薬といえるでしょう。関節リウマチの腫れを抑えるために用いられることもあります。冷えやすい体質の方に向いている漢方薬なので、暑がり・のぼせやすい・体力が充実している方には不向きです。生薬には、経皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・生姜(しょうきょう)などが含まれています。

4-2.葛根湯(かっこんとう)

肩こりに用いられる漢方薬として知られている葛根湯は、骨格筋の痛みに有効です。主に、筋肉の血流の流れを改善し、痛みを改善します。腱鞘炎の痛みのほか、首から肩にかけての強張りにも効果を発揮するでしょう。体力がある方に向いている漢方薬なので、体が弱い・体力がない・胃腸の調子が悪い・発汗が多い方には向いていません。含まれている生薬には、葛根・麻黄(まおう)・経皮・甘草(かんぞう)などがあります。

4-3.桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、血の異常を改善する代表的な漢方薬です。血の滞りを改善する生薬が複数含まれているため、腱鞘炎の症状をやわらげることができるといわれています。お血体質に効能を発揮し、体力は中等度以上の方に向いているでしょう。また、更年期障害でよくあるのぼせにも有効なので、赤ら顔になったり、のぼせたりすることが多い方にも向いている漢方薬です。経皮・芍薬・茯苓・桃仁(とうにん)などの生薬が含まれています。

4-4.まずは漢方薬に相談しよう

漢方薬は市販でも気軽に購入できますが、きちんと知識のある人に症状と状態を伝え、自分に合った種類を正しく服用することが大切です。服用方法や漢方薬の効能についても詳しく教えてくれるので、安心して服用し続けることができるでしょう。

5.腱鞘炎に関してよくある質問

腱鞘炎に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.腱鞘炎のセルフチェック法は?
A.以下のように手指を動かしたときに痛みが出る場合は、腱鞘炎の可能性があります。

  • 手の親指を手のひら側に曲げる
  • 親指を隠すように手を握る
  • ひじを伸ばした状態で手首を小指側に曲げる

特に、親指をまっすぐ上に伸ばしたり、親指を外側に広げて痛んだりしたときは、ドケルバン病の可能性が高いといえるでしょう。手指の使用を最小限に抑え安静にしても痛みが治まらない場合は、1度受診することをおすすめします。

Q.手指の痛みを発症させる原因の病気は?
A.よくあるのが、関節リウマチと関節炎の2種類です。関節リウマチは、免疫機能の異常が原因で全身の関節組織が炎症を起こし変形してしまう病気となります。主に、30~50代の女性に発症することが多く、起床時の関節のこわばりや腫れ、痛みなどが出るでしょう。慢性症状となるため、長期間の治療が必要になります。そして、関節炎は指の使いすぎなどで腱と腱鞘がこすれ合い、炎症が起きている状態です。腱鞘炎も関節炎の1種となります。

Q.腱鞘炎はどのように検査するの?
A.腱鞘炎の疑いがある場合、触診による診察が一般的です。患者から様子を聞き、目で手指の腫れを確認します。実際に、手指を触りながら、圧迫した際に痛みがあるか、どこが痛むのか具体的にチェックすることになるでしょう。手指を動かしたときに、どこか痛むのか具体的に医師へ伝えてください。また、場合によっては、レントゲン撮影を行うこともあります。

Q.漢方薬局の選び方は?
A.なるべく、処方実績がある薬局を選びましょう。多くの人の悩みを解決してきている漢方薬局ほど、具体的な症状と体質に見合った種類を選びます。また、薬局のスタッフの対応などにも注目してください。どのような質問に対しても丁寧かつ分かりやすい説明をしてくれるところは、安心して相談できます。

まとめ

腱鞘炎は、手指を動かすために必要な筋肉・腱・腱鞘などに負荷がかかり、炎症が起きている状態のことです。放置すると症状が慢性化し、常に痛みと戦わなければならなくなります。1番の治療は安静にすることですが、血の滞りが影響している可能性もあるので、漢方薬を活用しましょう。特に、何度も腱鞘炎になる方は血流の悪さが関係している可能性が高いため、漢方薬で血の流れを改善してください。まずは、漢方薬局に相談し、自分に合った種類を見つけましょう。