シェーグレン症候群は、自己免疫疾患の一つで全身の分泌腺に異常が出る病気です。発症するとひどいドライアイやドライマウスなどに悩まされることもあります。生命にかかわる病気ではありませんが、目や口の中の強い不快感に長年苦しめられている方も珍しくありません。また、ドライアイやドライマウスなど特定の症状だけが強く出た場合、原因がなかなか分からずに治療が遅れてしまうこともあります。
そこで、今回はシェーグレン症候群の症状や原因・治療方法などをご紹介しましょう。
シェーグレン症候群についての知識があれば、該当する症状が現れた際、すぐに治療に入ることもできます。最近目や口の中の渇きに悩まされているという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.シェーグレン症候群の基礎知識
はじめに、シェーグレン症候群の基礎知識についてご紹介します。代表的な症状や原因はなんでしょうか?
1-1.シェーグレン症候群とは?
シェーグレン症候群とは、涙腺・唾液腺を中心とした全身の分泌腺に異常をきたす自己免疫性疾患です。1933年にスウェーデンの眼科医、ヘンリック・シェーグレンによって発表された論文にちなんで病名がつきました。日本では1977年に厚生労働省の研究班によって研究結果が発表され、医師の間に広く知られるようになった病気です。
シェーグレン症候群には、関節性リウマチや全身エリテマトーデスなど、膠原病(こうげんびょう)と合併して発症する二次性シェーグレン症候群と、単独で発症する原発性シェーグレン症候群があります。
代表的な症状として、目や口腔(こうくう)内などのひどい乾き・関節痛・血管炎・呼吸器や腎臓へのリンパ球湿潤などがありますが、命にかかわるものではありません。症状は時間をかけてゆっくりと進行していき、発症したばかりの頃はドライアイやドライマウスといった症状が強く出る傾向にあります。そのため、眼科や歯科を受診しドライアイやドライマウスの治療を受けるものの、症状に改善が見られずに悩んでいる方も珍しくありません。
1-2.シェーグレン症候群の原因や現状
原発性シェーグレン症候群の原因ははっきりと分かっていません。ウィルスなどの環境要因・免疫異常・女性ホルモンなどの要因が組み合わさって発症するという仮説が有力ですが、まだ確定までには至っていないのです。
また、現在のところシェーグレン症候群を完治させる方法はありません。そのため、厚生労働省指定の難病に指定されています。患者さんは投薬などで症状をコントロールしつつ病気とうまく付き合っていくことが大切です。
1-3.シェーグレン症候群を発症しやすい人とは
シェーグレン症候群は、基本的に性別や年代を問わずに発生します。女性ホルモンが発病に関係していることから、男女比は1:14と女性の方が圧倒的に多い病気です。また、関節リウマチを発症していると、20%の確率でシェーグレン症候群が合併症として発症します。発症のピークは50代のため、更年期症状と誤診された例もあるのです。
現在、厚生労働省の発表によるとシェーグレン症候群の患者は、1万5千人~2万人いるといわれています。しかし、これはあくまでも病院を受診して病名が確定した人数です。病院を受診していない潜在的な患者は10万人以上いると推測されています。
2.シェーグレン症候群のセルフチェック
- ひどいドライアイに悩まされている
- 口呼吸をしていないのに口の中が渇きやすく、水を飲んでも解消しない
- 鼻の中が渇きやすく、鼻腔(びくう)内にかさぶたができたり鼻血が出たりする
- 毛が抜けたり夜間にトイレに立ったりすることが多くなった
- 日光に当たると皮膚が赤くなったり湿疹ができたりするようになった
このような症状がある場合は、シェーグレン症候群の可能性があります。できるだけ早く病院を受診しましょう。
3.シェーグレン症候群の診断や治療法について
この項では、シェーグレン症候群の診断方法や治療方法についてご紹介します。どのような治療が行われるのでしょうか?
3-1.シェーグレン症候群が疑われる場合
シェーグレン症候群かもしれないと思ったら、リウマチ科や内科・眼科などをまず受診してみましょう。膠原病(こうげんびょう)の診断や治療を行っている診療科があれば、そこが最もおすすめです。
シェーグレン症候群が疑われた場合、唾液や涙の量を計測する検査や、生検病理組織検査(せいけんびょうりそしきけんさ)・血清検査(けっせいけんさ)が行われます。涙や唾液の量が少なくなり、生検病理組織検査によってリンパ湿潤が認められた場合は、シェーグレン症候群と診断されるでしょう。
なお、関節リウマチや全身エリテマトーデスなどをすでに発症している場合は、かかりつけ医に相談をしてください。シェーグレン症候群は、膠原病(こうげんびょう)の合併症としてもよく知られています。
3-2.治療方法
シェーグレン症候群は、前述したように今のところ完治させる方法はありません。ですから、目や口腔(こうくう)内の乾燥を防ぐ治療が主流となります。また、口の中が渇くことにより、虫歯や口腔(こうくう)カンジタを発症しやすくなるため、その予防も大切です。
患者さんの中には、膣(ちつ)が渇く症状に悩まされる方も珍しくありません。膣(ちつ)が渇くと性交をするたびに痛みを感じるようになります。ですから、人によってはそれを和らげる治療が行われることもあるでしょう。
シェーグレン症候群は、全身に症状が現れるため眼科・歯科・産婦人科など複数の科で治療を行うこともあります。
3-3.病院の選び方
シェーグレン症候群は、一生治療が必要な病気です。ですから、通院しやすい病院を選ぶとよいでしょう。複数の診療科を備えた総合病院に通院していれば、一つの病院で複数の場所を治療することもできます。また、医師とのコミュニケーションを取りながら治療を進めていくことも大切なので、医師との相性を考えて病院を選んでもよいですね。
4.シェーグレン症候群のよくある質問
Q.眼科でシェーグレン症候群ではないかと診断されることはあるのでしょうか?
A.ドライアイにはたくさんの原因がありますが、シェーグレン症候群を発症すると目を潤す治療を行っていても症状が改善しません。そのため、治療の途中でリウマチ科や膠原病(こうげんびょう)科を紹介されることもあります。
Q.シェーグレン症候群になると、一生ドライアイは治らないのでしょうか?
A.投薬によって症状が落ちつけば、ドライアイの症状が緩和することもあります。
Q.関節性リウマチのように関節が破壊されることはあるのでしょうか?
A.それはありません。あくまでも痛みだけが起こります。
Q.男性でも発症をすることがあるのでしょうか?
A.患者数は少ないですが発症する可能性はあります。
Q.関節性リウマチの薬とシェーグレン症候群の薬は一緒に服用しても大丈夫ですか?
A.飲み合わせができる薬が処方されているはずなので、問題はありません。
おわりに
今回はシェーグレン症候群の症状や原因についてご紹介しました。シェーグレン症候群は命に別状こそありませんが、放置しておけばドライアイやドライノーズの症状に長期間苦しめられます。すでに眼科や歯科に通ってドライアイやドライマウスの治療を受けている方も、症状がいつまでたっても改善しない場合はシェーグレン症候群の可能性があるので、一度膠原病(こうげんびょう)科やリウマチ科を受診してみましょう。