産後の不眠が続く原因とは? メカニズムや改善・治療法など徹底解析

産後の不眠が続く原因とは? メカニズムや改善・治療法など徹底解析

十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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母親は、出産後も1日中赤ちゃんのお世話で大変です。産後はゆっくり体を休めたいところですが、やらなければならないことがたくさんありますよね。「産後、ゆっくり眠ることができなくなった」「不眠が続いている」など、産後の不眠に悩まされている方は多いでしょう。不眠が続くほど、心身ともに疲れが残り、体調不良という悪循環に陥ってしまいます。不眠を解消するためには、原因や治療・対処法を把握することが大切です。

そこで、本記事では、不眠の基礎知識から産後の不眠対処法・治療法・予防法などについて説明します。

この記事を読むことで、産後の不眠が続いている原因がわかり、適切な対処法や治療・予防法を知ることができます。悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

不眠の基礎知識

不眠・不眠症とは、一体どのような症状なのでしょうか。不眠状態から抜け出すためにも、主な原因や症状などの基礎知識を知ることが大切です。

1-1.不眠・不眠症とは

眠れない・寝つけないという睡眠障害が長く続くことを「不眠」と言います。不眠に当てはまる症状が週3回・1か月以上続く場合は、不眠症の可能性が高いのです。日本では、およそ5人に1人が不眠で悩んでいると言われています。男性よりも女性に多く見られる症状であり、20~30歳ごろに始まるケースがほとんどです。そして、加齢とともに症状が悪化し、中年・老年になると急速に増加します。

1-2.主な原因

不眠症の主な原因は、心理的原因・身体的原因・薬理学的原因・生理学原因の4つがあります。中でも、何らかのストレスに関連した心理的原因が多く見られるのです。過剰なストレスを感じ続けていると、精神病やうつ病のリスクも高まります。そのほかに、病気や症状による身体的原因、服用中の薬やカフェイン・ニコチンなどによる薬理学的原因、睡眠を妨げる環境による生理学原因が考えられるのです。

1-3.主な症状

代表的な不眠の症状は、入眠障害・中途覚醒・早期覚醒・熟眠感欠如の4種類に分類されます。それぞれの特徴を以下にまとめてみました。

  • 入眠障害:寝つきが悪く、30分以上経過しても眠れない
  • 中途覚醒:途中で目が覚めて、なかなか寝つけない
  • 早期覚醒:朝早くに目が覚めてしまう
  • 熟眠感欠如:ぐっすり眠った気がしない

1-4.なりやすい人とは

不眠症になりやすい人の性格に、ある共通点が見られました。完ぺき主義者や心配性・時間に厳しい人・責任感のある人が、不眠症になりやすい傾向があります。なぜなら、相手や自分の発言・行動に敏感で、気にし過ぎてしまう傾向があるからです。良い意味で肩の力を抜くことができないため、常にストレスを感じてしまい、不眠に陥りやすくなります。

産後の不眠について

産後の不眠が続くと、子育てがきちんとできるのか不安になりますよね。不眠から抜け出すためにも、原因や症状・関連する病気について確認しておきましょう。

2-1.産後の不眠とは

子どもを出産した後、不眠に悩まされる「産後の不眠」に悩んでいる母親は多いのです。「赤ちゃんの夜泣きで睡眠不足が続き、眠れないだけ」と思われがちですが、不眠症の可能性があります。不眠症は、横になっても眠れません。一方、睡眠不足は、眠くても睡眠時間が確保できない状態が続くことです。横になればすぐに眠ることができるでしょう。しかし、産後の不眠は横になっても眠れず、すぐに目が覚めるという状態が続きます。

2-2.産後不眠の原因とは

産後不眠の原因は、ホルモンバランスの変化・ストレス・環境の変化が挙げられます。中でも、1番に考えられるのが、ホルモンバランスの変化です。妊娠中は、プロゲステロン・エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が活性化します。しかし、産後は2つのホルモンが急激に少なくなり、母乳を作るためのホルモンが増加するのです。このホルモンバランスの変化が、自律神経の乱れにつながり、心身ともに緊張した状態が続きます。また、産後の忙しさによるストレスも原因の1つです。赤ちゃん中心の生活となるため、自分の時間が確保できない・昼夜関係なく世話をしなければならない・夫が家事や育児に協力しないなど、さまざまなストレスが負担となります。赤ちゃんを迎えたことによる環境の変化も、ストレスの要因となり、産後の不眠に関係しているのです。

2-3.産後不眠の症状について

一般的な不眠と同じ症状が現れるでしょう。眠れない・寝つけない・途中で目が覚める・朝早くに目が覚める・ぐっすり寝た気がしないなどの症状が長く続きます。産後に、著しく不眠の症状が出始めた場合は、産後不眠の可能性が高いのです。

2-4.産後不眠の問題点・関係する病気

産後不眠は、産後うつになる可能性があります。産後うつとは、気分が晴れない・落ち込んでいる・イライラする・何をするのも億劫(おっくう)・疲れやすいなど、通常のうつ病と同じ症状です。産後女性の約10~15%が、産後うつになると言われています。

産後の不眠~セルフチェック

産後の不眠は、できるだけ早めに改善することが大切です。そこで、産後の不眠に陥っているかどうか、セルフチェックをしてみてください。

3-1.セルフチェック項目

以下の項目に当てはまる人ほど不眠症になりやすく、すでに陥っている可能性もあります。いくつ当てはまるのか、ぜひチェックしてください。

  • 夜、よく眠れない
  • 赤ちゃんの世話に自信がない
  • 横になっても眠たくならない
  • 途中で目が覚めることがある
  • 育児や家事にストレスを感じる
  • 周囲の目が気になる
  • 嫌なことがあるとクヨクヨする
  • 悩みごとは自分1人で解決しようとする
  • 眠るまでに1時間以上かかる
  • コーヒーやたばこを常用している
  • 眠ったという満足感がない
  • 目覚めが悪く、朝起きられない
  • 目覚めたときは、何となく憂鬱(ゆううつ)な気分になる
  • 就寝・時間が決まっていない
  • 体調不良が続いている

3-2.なりやすい人・起こりやすい環境とは

「育児をきちんとしなければ」「自分1人で何とかしなければ」など、神経質になっていませんか? 産後不眠になりやすい人は、神経質な人が多いのです。また、自分1人で育児・家事をしている環境は、産後不眠に陥りやすい環境と言えます。夫婦で分担したり、両親の手を借りたりするなど、負担のかからない環境を整えることも大切です。

産後の不眠~対処法について

それでは、産後の不眠はどうすれば改善できるのでしょうか。対処法をいくつか紹介します。

4-1.こまめに寝る

赤ちゃんの夜泣きで、夜にまとまった睡眠が確保できないと思います。そんなときは、赤ちゃんが昼寝をしているときに、一緒に横になって寝てください。ちょっと時間が取れたときは、横になってこまめに体を休めましょう。一気に睡眠を取るのではなく、こまめに寝るだけでも心身がリラックスできます。

4-2.授乳の負担を減らす

赤ちゃんと一緒に寄り添いながら授乳をしてください。お産直後は、座るだけでつらく感じることもあるでしょう。一緒に横になれば、赤ちゃんも母親も授乳の負担が少なくなります。ミルク育児の場合は、時間があるときに準備をしておいてください。たとえば、粉ミルクを哺乳瓶の中に入れる・保温水筒でお湯を入れてベッドサイドに準備するなど、調乳が楽になる工夫をしましょう。

4-3.手抜きをする

母親全員が、完ぺきな育児・家事をしているわけではありません。上手に家事・育児をしている人は、ほど良く手抜きをして乗り切っています。少しでも睡眠を取ることが大切なので、家事については手抜きをして良いのです。たとえば、ロボット掃除機を使う・食事に惣菜(そうざい)を使う・夫に家事を手伝ってもらうなどしてください。

4-4.ストレス解消

育児不安や環境変化によるストレスは、自分の工夫しだいで軽減できます。近くに同じ年齢の子どもを育てている人がいれば、友達になりましょう。同じ悩みを持っているので、気持ちを共有できます。お互いに話をするだけでも、ストレス解消になるのです。また、赤ちゃんと一緒にリラックスできる音楽を聴くのもいいでしょう。

4-5.食事

食生活に気を配ることも、不眠症の大切な対処法です。代表的な成分はセロトニンですが、グリシンと呼ばれる成分も不眠症や疲労回復に効果があります。ハマグリ・アサリ・ほたてなどの貝類に多く含まれているので、ぜひ取り入れてください。基本的に、ミネラル・ビタミン・アミノ酸などの栄養バランスが整った食事を心がけることが大切です。

4-6.相談窓口

育児の不安や不眠で悩んでいても、家族や友人に相談できない方もいるでしょう。誰にも相談できない方は、近くの保健所・保健センター(厚生労働省関連ホームページ)や児童相談センターに相談してください。また、睡眠外来や産婦人科・心療内科・総合内科を受診して、原因を突き止めましょう。

4-7.注意点

産後の不眠や育児に対する不安は、多くの母親が感じるものです。特に、初めての子どもが生まれた場合は、さまざまな不安が押し寄せるでしょう。不安になり過ぎないことが重要で、1番いけないのは1人で悩み続けることです。夫や両親に相談する・相談窓口を利用するなど、誰かに話を聞いてもらいましょう。

産後の不眠~治療について

産後の不眠を解消するためには、どのような治療を受けるのでしょうか。受診すべき症状や主な治療法・薬・注意点について説明します。

5-1.受診すべき症状とは

心身ともに疲れていても眠れない・眠れない状態が1週間以上続く場合は、産婦人科を受診してください。不安な状態が続き、ストレスが溜(た)まっていると、産後うつに陥っている可能性があります。早期治療が大切となるため、すぐ受診すべきです。

5-2.主な治療法

産後不眠が続いている人は、セロトニンと呼ばれる物質が減少傾向にあります。セロトニンを増やすための環境作りや工夫が大きな治療法となるでしょう。たとえば、朝日を浴びる・寝る前にスマホなどの明るい画面を見ない・セロトニンが含まれている食品を食べるなどがあります。病院で診察を受ければ、授乳中でも服用できる睡眠剤を処方してもらえるでしょう。

5-3.薬について

市販の睡眠薬を使用しようかと考えている人は注意が必要です。市販の睡眠薬は、ジフェンヒドラミン塩酸塩が主成分となっています。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、授乳ができなくなるなどの副作用が起きているので危険です。薬を服用する場合は、病院で処方してもらいましょう。

5-4.注意点

病院で薬を処方してもらう場合は、どんな薬でどんな効果があるのか、1日の服用量など細部まで確認してください。たくさん飲めば効果が現れると思うのは大間違いです。きちんと正しく服用することで、効果が生まれます。薬に頼り過ぎず、基盤となる生活を見直すことも大切ですよ。

産後の不眠~予防法について

産後の不眠が悪化しないためにも、事前に予防する方法を確認しておきましょう。

6-1.1人きりで子育てしない

1人で子育てをするのは限界があります。大きな負担やストレスを感じ、そのまま産後うつになる可能性もあるのです。産後の不眠やうつを防ぐためにも、夫や両親と協力してください。夫が休みの日は赤ちゃんを預けてリフレッシュをしたり、一緒に外へ出かけたり、気分転換をしましょう。また、夫との関係を保ちけるために、夫婦の時間を作ることも大切です。両親に子どもの世話を頼み、夫婦2人でディナーやショッピングを楽しんでください。

6-2.そのほか

リラックスして過ごすこと・気楽な気持ちで毎日を過ごすことも大切な予防法です。なかなかうまくいかないこともありますが、「こんなときもある」「仕方がない」と割り切ってしまえば楽になりますよ。不眠を必要以上に恐れず、楽な気持ちで子育てをしましょう。

産後の不眠に関してよくある質問

産後の不眠に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.産後の不眠は、いつからいつまで続くのか?
A.産後の体が元通りになるまで、およそ6~8週間かかると言われています。この期間を産褥期(さんじょくき)と言いますが、不眠になりやすい時期です。ホルモンバランスの変化が原因の場合は、産後2週間前後で良い改善すると言われています。

Q.産後うつの初期症状が知りたい
A.基本的に、一般的なうつ病の初期症状と似ています。気分が沈みがちになる・漠然と不安を感じる・夜眠れなくなるなどの症状が現れるでしょう。育児に関しては、子どもがかわいいと思えない・育児が楽しくないという症状が現れます。

Q.セロトニンが含まれる食品は?
A.牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、カツオ・マグロなどの魚類、豆腐・納豆・味噌(みそ)などの大豆製品、アーモンド・ピーナッツなどのナッツ類に多く含まれています。毎日、栄養バランスの取れた食生活を心がけてください。

Q.サプリメントは飲んでも大丈夫なのか?
A.市販の薬よりもサプリメントのほうが副作用は少なめです。食事から摂取できない場合は、サプリメントを利用するのも方法の1つでしょう。しかし、サプリメントの中には、刺激的な成分が含まれているものもあります。念のため、産婦人科の医師に相談するといいでしょう。

Q.不眠を悪化させるNG行為とは?
A.寝る前にスマホやテレビなどの明るい画面を見る・冷たい飲みものを飲むなどの行為は、睡眠障害を悪化させる要因です。寝る前は、温めた豆乳やショウガ入りのノンカフェインティーなど、温かい飲みものにしてください。リラックス効果が高まり、眠りやすい状態へ導けます。

まとめ

いかがでしたか? 横になっても寝つけない・途中で目が覚める・ぐっすり寝た気がしないなどの症状を不眠と言います。産後の不眠は、ホルモンバランスや環境の変化・ストレスが大きく関係している症状です。改善するためにも、環境や子育ての見直しをしていきましょう。たとえば、夫や両親に協力してもらう・授乳の負担を減らすなど、工夫できることはたくさんあります。大切なのは、不眠を心配し過ぎず、気楽に育児をすることです。不眠を解消するためにも、基礎知識や解消ポイントを把握してくださいね。