カビ(真菌)は、私たちの身近にたくさん存在している菌の一種です。カビにはたくさんの種類があり、人間の生活に役立つものもあれば、病気の原因になるものもあります。近年では、カビが原因でアレルギーを発症する方も増え、住宅のカビ対策が重要になってきているのです。
そこで、今回はカビが原因で発症するアレルギーの症状や治療方法・予防方法などをご紹介しましょう。
この記事を読めば、カビアレルギーの症状や発症しやすい方、治療の方法などが分かりますよ。カビアレルギーに悩んでいる方や、自分がカビアレルギーではないか、と考えている方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
アレルギーの基礎知識
はじめに、アレルギーの定義や症状・原因などアレルギーの基礎知識をご紹介します。アレルギーはなぜ発症するのでしょうか?
1-1.アレルギーとは
アレルギーとは、特定の物質に対する免疫の過剰反応です。免疫とは、体に侵入してきたウィルスや細菌など有害物質を退治する機能であり、健康な生活をおくるためには欠かせません。そんな免疫機能の一つに、獲得免疫(えとくめんえき)というものがあります。獲徳免疫内のIgEという抗体が増えすぎてしまうと、無害な物質にも体が過剰に反応するようになってしまうのです。そのため、特定の物質が体内に入ると体はそれを体外へ排出しようとして、激しい咳やくしゃみ・涙などが出ます。鼻やのどの粘膜が腫れ上がることもあるでしょう。皮膚に付着した場合は、皮膚がかぶれることもあります。
1-2.アレルギーの原因
アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといいます。よく知られているのは小麦や卵などの食品・杉やヒノキの花粉・ハウスダストなどです。金属でもアレルギーが発症することもあります。アレルギーがいつ、どのように発生するかは分かりません。花粉症などは、前年度までは平気だったのに、ある年突然発症することも珍しくないのです。
1-3.アレルギーの患者は増加傾向にある?
昔に比べると、現在はアレルギーを持っている方が増えたと感じる方もいるでしょう。しかし、アレルギー自体は昔からありました。体調を崩す原因がアレルギーだったと分からないケースが多かったというだけです。現在は医学が発達し、血液検査でアレルギーかどうかがすぐに分かるようになったため、アレルギーを持っている方が増えているように感じられるのでしょう。その一方で、花粉症やカビアレルギーは実際に患者数が増加しています。これは、アレルゲンとなる杉やヒノキの花粉やカビが増加しているからです。では、なぜカビは増加しているのでしょうか? それを次の項で詳しくご紹介します。
カビアレルギーについて
この項では、カビアレルギーについて詳しくご紹介します。どのようなカビがアレルギーの原因となるのでしょうか?
2-1.身近に潜むカビとは?
カビ(真菌)は私たちの周りにたくさん存在しています。カビの種にあたる胞子はとても小さく、目に見えません。しかし、増殖できる場所があると、そこに根を下ろし爆発的に繁殖します。私たちが通常「カビ」と呼んでいるものは、増殖した姿です。カビが増殖するには、カビにとって適した環境であることが大切になります。日本は高温多湿のため、カビが非常に繁殖しやすい環境です。特に、最近の住宅は気密性が高いので、除湿対策をしっかりと行っていないと壁紙と壁の隙間や壁と断熱材の間にまでカビが大量に発生することも珍しくありません。
2-2.カビアレルギーとは
カビアレルギーとは、文字どおり体内に入ってきたカビの胞子に免疫が異常な反応を示す状態です。カビの胞子は空気中にたくさん浮遊しています。家の中にカビが大繁殖していれば、カビの胞子はさらに増えるでしょう。それが呼吸をする度に体に入り、咳や鼻水・皮膚炎などの症状を引き起こします。また、免疫力が弱っている場合は、体内にカビ(真菌)が繁殖して、肺アスペルギルス症という肺炎の一種を引き起こすことがあるのです。免疫力が弱い幼児や高齢者、病気の治療で免疫力を抑制している方は注意しましょう。
2-3.カビアレルギーが発生する原因とは
カビアレルギーは誰でも発症する可能性があります。その中でも、家にカビが繁殖していると発症率はより上がるでしょう。前述したようにカビは見えない場所に大量発生することも珍しくありません。意外に多いのは、エアコンの中です。エアコンを運転していると空気中の水分が機械の内部に溜まります。そのため、カビが発生しやすいのです。内部がカビだらけのエアコンを運転すると、部屋中にカビの胞子がまきちらされます。家のエアコンだけでなく、職場やよく行く施設の空調の中にカビが生えていた場合は、カビの胞子が大量に混じった空気を吸い込んでいることになるでしょう。そのため、カビアレルギーがより発症しやすくなります。
また、体の免疫力が弱まっていると、アレルギーだけでなくカビ(真菌)が原因の肺炎などにかかる可能性もあるでしょう。
カビアレルギーかどうかのセルフチェック
- 特定の場所(特に密閉された室内)に行くと咳や鼻水が止まらなくなる
- しつこい咳が長く続く
- 屋外など開放的な場所に行くと症状が弱まる、もしくは治まる
- 梅雨など特定の季節になると症状が強く出る
このような場合は、カビアレルギーの可能性があります。最寄りの耳鼻咽喉科やアレルギー科を受診しましょう。
カビアレルギーの治療と予防方法
この項では、カビアレルギーの治療や予防方法をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
4-1.カビアレルギーの診断
カビアレルギーの診断は耳鼻咽喉科やアレルギー科で行います。アレルギー科を併設している耳鼻咽喉科もありますので、そのような病院が近くにあるようでしたらそこを受診しましょう。カビアレルギーは、ハウスダストアレルギーとして診断されることもあります。ハウスダストとは、主に建物内で発生する目に見えない微細なホコリのことで、カビの胞子やダニの死骸・花粉・ペットの毛などが原因です。
アレルギーの検査は、血液検査や皮膚テストなどがあります。アレルギー体質かどうかは血液検査をすればすぐに分かりますが、アレルゲンを特定するためには皮膚テストなどを行う必要があるのです。問診も重要な診断材料になります。
4-2.カビアレルギーの治療
アレルギーの治療は、アレルゲンを除去して症状を抑える投薬治療が中心です。しかし、カビの場合はどれほど掃除をしても完全に除去するのはとても難しいでしょう。ですから、カビの生えそうなものを処分したり掃除を徹底したりしながら、服薬を続けます。また、体の免疫力をアップするように指導されることもあるでしょう。アレルギーの治療は長期にわたって続きます。ですから、焦らず気長にできることをやっていくことが大切です。
4-3.カビアレルギーを予防する方法
カビアレルギーを予防するためには、家の中にカビが生える環境を作っておかないことが大切です。除湿をしっかりとして家の中の風通しもよくしましょう。湿度が60%を超えるとカビが生えやすくなります。すでにカビが見える場所に大繁殖している場合は、ハウスクリーニングなどを入れてもよいでしょう。エアコンのクリーニングも大切です。また、野鳥のフンに発生するカビもあります。集合住宅に住んでおり、ベランダに野鳥がよく来るという方は、ネットを張るなどして野鳥を近づかせないようにしましょう。ハトがたくさんいる場所などにも近づかないことが大切です。
4-4.高齢者や幼児は特に注意する
カビは、アレルギーだけでなく肺炎や副鼻腔炎(副鼻腔真菌症)の原因にもなります。免疫力が弱い方にかかりやすいので、幼児や高齢者は特に注意が必要です。家にカビが少なくなれば、発症の可能性も減るでしょう。
カビアレルギーに関するよくある質問
Q.カビアレルギーはある日突然発症することもありますか?
A.可能性としては十分にある話です。見えないところにカビが生えた家に住んでいると発症率はさらに上がるでしょう。
Q.カビアレルギーを完治させることは難しいのですか?
A.現在のところはとても難しいでしょう。カビを減らすことが大切です。
Q.カビアレルギーは、他のアレルギーと同時に発症することはありますか?
A.アトピー性皮膚炎を発症し、治療にステロイドを使用していると免疫力が低下して発症することもあるでしょう。
Q.エアコンのフィルターはこまめに掃除していますが、不十分ですか?
A.エアコンのカビは機械の内部で発生しています。専門業者に掃除を依頼するのが一番です。
Q.エアコン以外でカビが発生しやすい家電はありますか?
A.加湿器にはカビが発生しやすいので、洗える場所はこまめに洗ってください。
おわりに
いかがでしたか? 今回は、カビアレルギーの症状や原因・治療方法などをご紹介しました。咳や鼻水などは風邪の症状でもありますので、風邪だと思いこんで病院にもいかないという方もいるでしょう。しかし、風邪の場合はどれほど長くても2週間あれば症状が治まります。2週間以上たっても症状が治まらず、特定の場所に行くと症状が強く出る場合は、耳鼻咽喉科を受診してみてください。肺炎を発症しているととても厄介なことになります。治療も長くかかるので、早めの受診が大切です。